安倍新首相の滑り出しは上々である。就任早々日中・日韓首脳会談を行ったのは大得点だったが、その最中に行われた北朝鮮の核実験で得点は倍化した。安倍首相はアジア外交の重要性を強調しているが、やはり対中外交が中心的課題だろう。

首脳会談を無理してまで中国が受け入れたのには中国なりの理由があったことは「時事直言」などで述べたとおりである。つまり2005年にアメリカ企業が中国から資金を引き揚げた影響で同年の海外からの対中直接は何と27%も減ってしまった。海外投資に依存している中国経済にとって2006年にはなんとしても日本からの投資で穴埋めしなくてはならない状態になっていたのである。だから中国にしてみたら靖国問題などで日本と喧嘩をしている場合ではなかったのである。10月は待ちに待ったギリギリのところだったのである。

だから全人代(中国の国会)初日の超忙しい時期にもかかわらず首脳会談開催に同意したのである。小泉首相が8月15日に靖国参拝をした時でも、中国共産党広報部は各メディアに対日抗議活動をしないように指令している。ところが一方戴第一外務次官は「靖国問題は今後5−10年も長引くだろう」と発表している。つまり靖国問題は、中国人民の反政府運動のガス抜きとして必要であることを認めているのである。

今後良好な日中関係を維持するには首脳会談も必要だが、「阿吽の呼吸」の会話が必要である。安部首相の「靖国に行くとも行かぬとも言わない」の「靖国参拝を前提とした日中友好」は一種の阿吽の呼吸のなせる業である。中国に日本の情報が少なすぎる。またスポーツや芸能を通じた交流が少なすぎる。政治はハード外交。もっとソフト外交を積極的に進めるべきである。ソフト外交が発展すればするほどハード外交に阿吽の呼吸が効きはじめる。

もっとも日中があまり親密になることをアメリカは好まないが。

(2006年11月06日)