世界中の疑問は「何故アメリカは大量破壊兵器の有無がわからない(結果的にはなかったが)イラクに先制攻撃をかけたにもかかわらず、自ら核兵器や弾道ミサイルの保有を宣言し、またアメリカ自身の調査結果から核を保有しかつ拡散していることが明確である北朝鮮には武力行使をしないのか」である。 理由は二つ: 北朝鮮とイラクとの違いは、イラクはかつてアメリカの同盟国だったが、その後同盟関係はなかった。だからイラクを壊滅しても誰からも文句は言われない。さらに述べると、アメリカは即中東の原油を確保する必要があった。 一方北朝鮮は中国と事実上同盟関係にある。1950年の朝鮮戦争で敵国アメリカに対して共に血を流した「心の繋がり」と、来るべき中台戦争でも共に戦う間柄である。 したがってアメリカが北朝鮮に対して武力行使をすることは、即中国に対して宣戦布告をするのと同じである。いまアメリカは、中国という「インフラ」で金儲けをしている最中であり、中台戦争のための米軍再編成もまだ終わっていないから、即戦闘行為に至る必要はない。だから北朝鮮に武力行使はしないと言ったり、「北朝鮮問題先延ばし」のための6ヶ国協議を主張しているのである。 もう一つの理由は、アメリカの東アジア軍事覇権政策に関係がある。日米安保のもとに約4万人、五十箇所の米軍基地が日本にある。韓国、台湾も同様である。こうした米軍基地の存在はアメリカの東アジア軍事覇権に欠かせない。 もし日本から北朝鮮の脅威がなくなったらどうだろう。日米安保の意味がなくなるのではないだろうか。ここにアメリカにとっての”北朝鮮脅威の必要性”がある。アメリカのアジア軍事覇権を支えているのが北朝鮮なら、なんで武力行使ができようか。というわけで、アメリカにとっては日本の拉致問題も解決されては困るのである。何故なら拉致が解決したら国交正常化、平和条約締結になってしまうからである。 北が拉致問題で日本に対して全く誠意がないのは、アメリカの立場をよく理解しているから。 (2005年03月07日号) |