世界的株価下落の原因は「日本」! 私が有名になったきっかけは、1998年の1月に「本年10月上旬に円は110円になる」と言ったことだ。98年当時、書店では「円は270円に下落する」などと予測する本が溢れていた。事実、6月には1ドル140円台までの円安! 私の110円がいかに唐突かが分かる。98年と言えば、ロシアのデフォールト(債務不履行)が持ち上がり、アメリカのLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネージメント)が崩壊した年であった。 当時も今日同様、日銀は低金利政策を採っていたから、世界の投機資金の主な資金源は日本であり、安い円を借りて高成長国市場へ投資された。ところが、アジアとロシアの金融不安からキャリートレード(円を借りて他通貨資産に投資する)解消が10月から急速に始まったのである。私は多くのヘッジファンド借入返済期限が集中している10月に円を市場で買って返済する動きが加速すると読んでいた。結果は大当たりで、10月8日1ドル111円の超円高となったのである。 日銀はゼロ金利政策解除を決めたが、実際に利上げに踏み切るのは8月ごろと予想されている。CPI(消費者物価指数)は6カ月連続上昇、5月26日にはコアで前年同月比0.5%アップとなったからである。日銀はCPIを主な利上げの判断基準にしているので、連続CPI上昇から8月利上げ説が出るのである。5月上旬の世界的株高が一気に中旬過ぎから世界的株安になった。インド株、サウジ株の暴落等々が言われるが、これらは現象であって原因ではない。世界の投機資金が一時的に商品と株式市場から資金引き上げにかかったのが原因であり、そのきっかけとなったのが「日銀の利上げ再開」の見通しによるキャリートレード解消である。 ヘッジファンドは資金にレバレッジをかけて短期投資に走る。彼らの主な資金源はゼロ金利の円の借り入れであった。証拠金取引をしている投資家にはお分かりの通り、ほんのわずかでも金利が上がると、受取、支払金利の額は増大する。既に日本の短期金利は急騰しているので、ヘッジファンドの中には金利負担に耐えかねて各市場で投売りを迫られているところもある。キャリートレード解消を起こした日銀のゼロ金利政策解除が、今回の世界株安と5月円高(円を買って返済するから)の真の原因である。 8月に日銀が利上げをすれば、キャリートレード解消で行き場を失った余剰投機資金と国際投資資金は日本へ向かうことになる。こうなると双子の赤字増大のアメリカは利上げを止めるわけにいかなくなる。まるで日銀が世界に利上げを輸出するようなことになる。問題は世界の株安が続く中で、果たして日本だけの株高が続き得るだろうか、ということである。これが分かるまで本格的「夏相場」はペンディング(お預け)である。
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