第二のホワイトハウス、小泉政権が終わった! 8月15日の小泉首相の靖国参拝は小泉超親米政権終焉を告げるシンボル的イベントとなった。アメリカの独立記念日に合わせて発射された北朝鮮のミサイル実験同様センセーショナルであった。 政治の世界では公式に反対したからと言っても必ずしも反対を意味しない。アメリカは北朝鮮のミサイル発射に公式に反対し、日本の制裁条項付き安保理決議案の共同提案国になるなどしたが、本音では北朝鮮のミサイル発射を容認していた。日本の過剰反応を演出したのも実はアメリカ。5月から日本にテポドン発射準備情報(映像)を提供し続けながら、アメリカの独立記念日に向けて日本の対北朝鮮危機感が高まるのを期待していた。期待通りミサイル発射と同時に日本は大騒ぎになり、連日テレビ、新聞等マスコミはトップ報道を続けた。 マスコミの大騒ぎと大論議の結果国民が知らされたことは、1)日本は北朝鮮や中国からのミサイル攻撃に全く無防備であること、2)日本のミサイル防衛はアメリカに「おんぶに抱っこ」であること、3)アメリカのミサイル精度は7割程度で、100発撃たれたら30発は本土に命中すること、4)防衛白書は中国が日本を標的にしたミサイル基地を増設している事実を報告していること、5)日本の対北朝鮮制裁に対して北朝鮮スポークスマンがテレビ声明で、「日本の制裁を宣戦布告と受け取り、直ちに物質的報復を行う」と発表したこと、6)防衛庁長官が「ミサイル防衛はわが国の安全にとって急務」と発表、現行計画を前倒しすると発表したこと、等々で、「ミサイル防衛は、それが何であれ、またコストがいくらであれ、やらねばならない」という国民的コンセンサスが出来上がった。そこで、アメリカが決断を渋る日本に不満を抱いていたミサイル迎撃基地建設と米軍再編成に伴う日本負担金、合わせて約9兆円の対日要求がすんなり解決する運びとなった。北朝鮮のミサイル発射無しには到底考えられなかったことである。 何故小泉首相は口を開けば「靖国参拝は心の問題で政治問題ではない」と言い続けてきたのだろうか。それは首相が靖国参拝を常に政治問題にしてきたからである。靖国参拝の政治的意味は、「日中国交の悪化」である。アメリカの国益上日中関係良好が不都合なら、靖国参拝し、その逆なら参拝をひかえるのが小泉首相の務めであった。ブッシュ政権誕生以来、国防省(タカ派)は中国脅威論を軍事予算増強の主要な根拠としてきた。当然日本はそれに呼応して防衛庁(防衛白書)も外務省(麻生外務大臣の発言の通り)も中国脅威論を展開してきた。従って日中国交が良好であることは、中国脅威論と相反することなのでアメリカの国防戦略(軍事力拡大政策)に反する。7月14日からすでに1ヶ月に及ぶイスラエルのレバノン侵攻もアメリカの軍産複合体を代表するタカ派チェイニー副大統領の望むところであり、レバノン侵攻の結果、アメリカの海外軍事援助の5割を占めるイスラエル軍事援助費は緊急増額となった。 今後は中東危機増大化を根拠にした軍事費拡大が中心になり、対中国戦略は軍事から経済に移行する。つまりアメリカが望む時期に中国経済がバブル崩壊するよう誘導する戦略である。従って今後日中関係は良好、緊密でなくてはならず、日本は中国に不必要なまで資金導入をして中国経済のバブル化を促進することがアメリカの望むところである。アメリカの利益代表である日本の首相としては、こんどは靖国参拝をしてはいけないのである。小泉政権の当初、小泉靖国参拝に異議を唱えなかったブッシュ大統領は今不快感を露わにしている。アメリカの対中戦略が変わったからである。8月15日の小泉靖国参拝は、今までのアメリカの対中戦略終了を飾るシンボル的政治イベントとなった。しかしいくら戦略国家アメリカでも180度の急激な政策転換も難しいことから、もう少し中国脅威論が必要なら、日本に短期間だけの小泉亜流のリリーフピッチャーを認めるかも知れない。
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