第404 国会議員号  (2007年2月19日号)

増田俊男事務局 http://chokugen.com
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緊急号

現在カナダへ向かう途中であるが「明日では遅すぎる」ので、日本の政治家の皆様に私のお願いをお伝えしたい。それは、アメリカのイラク開戦(2003年3月)を「判断が間違っていた」と公言して憚らない現職久間章生防衛相の罷免または辞任である。20日に来日するチェイニー米副大統領が「久間防衛相と会う予定はない」と表明していること自体、「久間氏が日米関係を阻害した」ことの何よりの証明である。日米両国において、日米防衛関係が最重要であることは言うまでもない。米副大統領が外務大臣より先に会うのが防衛大臣である。それを避けたことの意味の重大さを日本の国会議員は心すべきである。

明日20日の米副大統領来日を待たず、久間大臣は、ブッシュ大統領と安倍首相に陳謝の上、辞任すべきである。そして安倍首相は(沖縄に精通した)現防衛次官・守屋武昌氏を新防衛相に任命すべきである。自ら損ねた信頼関係は、自ら修復しなければならない。「久間さん、一体何の恨みがあってここまで安倍首相を苦しめ、かつ日本の恥を世界にさらすのか?」


6カ国協議合意の「正論」

「北朝鮮の勝利、アメリカの負けだ」(ボルトン前米国連大使)、「ブッシュの豹変」(各紙論評)、「肝心の濃縮プルトニウムと既存の保有核兵器が抜けている」、「『拉致問題の進展なしに援助なし』は米、中、韓、露に理解された」(日本政府)……等々の論評がある。今日までの日本国内議論では「日本は船に乗り遅れる、孤立する」の見解は間違いとされ、「どうせ最後は日本の援助なしには本合意の実現は難しいのだから、日本は拉致問題解決一点張りで正解」が世論を制した。北朝鮮は今まで一貫して「拉致問題は解決済み」の立場を採り、今後の日朝作業部会で主張を変えるとは考えられない。こうした認識下で、なぜ米、中、韓、露は「拉致進展なしに援助なし」の日本の主張に理解を示したのだろうか。それは「2005年9月19日の6カ国協議合意とその後の経緯」が答えてくれる。

9/19/05の合意は、「5カ国は北朝鮮の主権を尊重し、北朝鮮は核廃絶に向けて行動する」という内容で、具体的行動プランは先送りになったとはいえ、体制維持を悲願とする北朝鮮に大きな期待を持たせるものであった。その後は本稿で解説した通り、合意の4日後、核とは別の偽ドル偽造等の問題でアメリカは北朝鮮に金融制裁を掛け、北朝鮮を失望と怒りに追いやり、2006年7月のミサイル発射、10月の核実験へと誘導した。その結果、日本は単独で北朝鮮に各種の経済制裁を発動することになり、また日米間の懸案であった日本の米軍再編成への資金援助、イージス艦配置を含む日米ミサイル防衛の前倒し等々がいとも簡単に解決された。したがって今回の6カ国協議の目的は、アメリカの対日目的達成に貢献した北朝鮮に対して課した制裁を解くことと、タイムリーに発表されたアーミテージ・レポートに示された次なるアメリカの対日要求達成のためのクサビを打っておくことである。

6カ国協議での合意が発表された直後、アメリカは急遽、韓国にステルス機(F-117)1個飛行隊(15〜20機)を配備した。続いてアメリカは2月17日、ステルス(F-22)2機を沖縄嘉手納基地に配備、さらに8機が昨日到着している。ステルス機は「見えない戦闘機」といわれ、レーダーで捕らえにくい最新鋭機で、北朝鮮のミサイル基地や核施設をピンポイントで攻撃する最適機である。すでに北朝鮮は6カ国協議前に米空軍情報をキャッチ、合意(13日)の翌日(14日)にアメリカに対して、ステルス機の日韓への配備は「軍事挑発行為」だとして配備中止を求めている。ではなぜ北朝鮮は実際にアメリカに抗議をしておきながら、アメリカのステルス日韓配備を黙認しているのだろうか(当然援助を手にすることが先だから)。

 ところで、北朝鮮にとっての6カ国協議の成果は「初期段階(60日)」の5万トンのエネルギー支援と韓国からの「合意枠外」の援助再開である(米―50万トン、肥料40万トン、その他=韓国はすでに独自に原油5万トンを与えることを決めている)。北朝鮮はすでに6カ国協議合意内容以上の援助を手にしたのも同然なのである。もちろん老朽化した寧辺の核施設の作業を停止は北朝鮮の望むところ。初期段階までは北朝鮮は日朝作業部会が「決裂」しないよう努めるだろう。寧辺での作業(一時)停止後、他の核施設の「無能力化」はあり得ないし、アメリカも望むところではない。5万トンの原油を得た後は、北朝鮮はアメリカの日韓ステルス機配備に対抗する行動開始に移るのである。この時になって初めて、なぜ5カ国が日本の「拉致一点張り」を許したのかの理由が分かる。「日本の拉致一点張り」を、初期段階後、北朝鮮が次の段階への移行を拒否する理由に使うためである。さらにステルス機の脅威を理由に、北朝鮮は再び対日軍事脅威行動に出る。これで日本はアメリカが求めるアーミテージ報告(勧告)に従うことになる。政治力学とはこうしたもの!








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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)