政治は芝居(シバイ)
今やShibai(シバイ)は普通名詞として世界中で使われている。
観劇のお芝居ではない。真実を知られたくない為、事実と異なるそぶりをして見せることを言う。政治は本質的にシバイである。Tsunami(津波)が世界用語になっているのと同じほどシバイは有名語になった。
10月24日トルコ軍がロシアの爆撃機がトルコの領空を侵犯したという理由で撃墜した。
以前にもロシア機は何度かトルコ領空を侵犯したことがあったがトルコは警告を発しただけで一切軍事行動は執らなかった。今回トルコが撃墜したのにはいささか訳がある。
国際航空法では他国の飛行機が自国の領空を侵犯した場合は警告を発し領空外に出るよう要請又は誘導する。撃墜など軍事行動に及ぶ場合は他国機が自国の安全を犯す目的を帯びていることが客観的に認められた場合に限られる。10月24日ロシアはトルコを含むNATOとサウジアラビア等有志連合に飛行目標地(シリア)、航行予定空図・時間等を事前に通達していた。アメリカの軍事衛星情報ではロシアの爆撃機がトルコ領空を侵犯したのは16秒間でシリアとトルコの接点の部分であった。トルコはロシア機がトルコを攻撃する目的を持っていないこと、しかも侵犯したのは一瞬でしかなかないことを百も承知でロシア機を撃墜した。相手の飛行機に対して武力行使を執るのは領空を侵犯するしないはではなく、相手が自国を攻撃しようとしているかどうかにかかっている。
今回のトルコのロシア機撃墜は完全に国際法違反だからトルコは即刻ロシアに謝罪し、賠償金を支払うのが当然の理である。では何故トルコは謝罪を拒否するのだろうか。
過去にロシア機がトルコ領空を侵犯した際、トルコは国際法によって警告はしたが軍事行動は執らなかった。ところが最近アメリカから何故撃墜しなかったのだと追及されたので、今度領空侵犯があったら必ず撃墜すると約束していたのである。トルコがロシアに謝罪しないのはトルコの意志ではなくアメリカの意志でやったことだからである。
アメリカとトルコはシリアの反政府勢力、自由シリアや他の軍事組織を支援している。
アメリカやトルコはロシアがシリアでの対IS空爆にとどまらずアメリカ・トルコ支援の反政府軍を攻撃していると非難を続けてきた。もし自由シリア軍や他の反政府軍がアメリカとトルコの同盟軍ならロシア機は同盟軍を攻撃する為トルコの領空を侵犯したことになり、トルコのロシア機撃墜が正当化されるか、少なくともグレーになる。(疑わしきは罰せず)
11月29日フランスのオーランド大統領とロシアのプーチン大統領のトップ会談が行われ、オーランド大統領はプーチン大統領にシリアでのロシアの対IS空爆の際、自由シリア等の反政府軍を攻撃しないよう要請し、プーチン大統領は合意した。
その代わりトルコにロシア方式でシリア内戦を終わらせることに同意させるよう圧力をかけることになった。トルコが合意しなければアメリカがロシア機の侵犯は16秒であったこと、ロシア機はトルコ攻撃を目的としていなかったことから国際法違反とし対ロ謝罪を求めることになる。トルコはアメリカとロシアに「はめられた」ことに気付きシリアとの国境のクルド族自治区をしぶしぶ認めることになる。まあ、世界はこんなシバイを毎日飽きもせず繰り返しているのである。時事直言にご協賛下さる読者にお送りする「目からウロコの80分」(新春特別講演CD版)ではまだまだ山ほどある「シバイ」をお聞かせします。こういう話は「肉声」の方が迫力があります。
11月13日「パリ同時多発テロ」のような「子供じみたシバイ」もあります。
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