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平成30年度一覧
1293号(2018年12月10日号)国会議員号
小さい政府から大きい政府へ

戦後から今日まで発展を続けてきた世界のバックボーンとも言うべき哲学は民主主義であった。民主主義とは「民が主」であり「官僚は公僕」と言う考えである。1930年代、40年代の日本は日中戦争、日米戦争で軍国主義時代であり民主主義の思想は排除されていた。国体第一、「官僚はお上」であった。男尊女卑で男女は平等ではなく親と子も同権ではなく、上流階級、下層階級の差別社会であった。戦争時代には秩序と統制が必要だから仮に戦前の哲学を封建主義と言うなら、それは必要な御用哲学であった。
戦後世界を二分した東西冷戦が終わると、世界最大の軍事力と経済力を持つアメリカが世界の覇権国になり局地戦争はあっても世界戦争はなく、平和のもとに世界経済は発展を続けた。アメリカにトランプ政権が出来る前から欧州をはじめ世界中で共通した変化が起きていた。それは「小さな政府」から「大きな政府」への移行である。イタリア、フランス、ドイツ、スペイン、ハンガリア等々で極右政党が躍進、民主、中道政権が政権の場から去った。この傾向に火をつけたのがトランプ大統領の登場である。トランプは「アメリカファースト」を標榜し、「他国の富はアメリカの富」の考えを基に「奪う政治」を展開する。
経済成長が止まったアメリカが今なお成長を続ける中国から制裁関税の名の下に中国の成長の糧(富)を奪うのは当然だと言う。戦後アメリカが国是として世界に普及した自由の恩恵で繁栄してきた世界は「自由という名のミルク」を求め続けているが、親であるアメリカが自由(ミルク)を拒否した以上アメリカの子として育った世界は乳離れをせざるを得ない。TPP も日欧貿易協定も相互妥協であり、妥協は犠牲である。親(アメリカ)が犠牲を放棄した以上、やがて子(世界)は犠牲に耐えられなくなる。トランプは意図的に同盟国欧州と対立し、ロシアと欧州の対立を激化させ、さらにサウジとイランを戦争に誘導している。
世界大戦の準備である。
62名の大富豪が世界の富の53%を持つ(マッキンゼー報告)に至った時、アメリカのキングメーカーである外交問題評議会(CFR)の会長リチャード・ハーンは「リベラル世界秩序R.I.P」(安らかに眠れ)を発表、戦後世界に平和と繁栄を持たらした民主主義の時代の終焉宣言をした。
そして世界は我先に全体主義を哲学とする国家へ向っている。
小さな政府から大きな政府へ、そして民主主義から全体主義へ、これは革命である。革命と戦争はWatch & Chain(二つで一つ)であるなら、異端児トランプがまともに見える。どうやら今我々は嵐の前の静けさの中に居るようだ。


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