第350号  (2006年03月27日 国会議員号)

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アメリカの民主主義拡大戦略のおさらい

先の「時事直言」(3月20日号)で「世界の民主化拡大はアメリカの国益を保障する」ことを述べた。中央から地方へ、さらに住民へと権力の移動が進めば進むほど、国家としての統治力は低下する。アメリカは一部の限られたエリートを養成して国政に当たらせる一方で、他国には自由拡大と民主主義の名の下に国家統治と戦略能力に最も疎くならざるを得ない国民に国家権力を左右する「自由」を与えることを強要する。曰く「アメリカは世界に自由を拡大する責任がある」。その結果は世界の「国家統治力の低下」とアメリカの世界統治力強化である。


アメリカのジレンマ

アメリカに最も従順な小泉内閣は「中央から地方へ」「官から民へ」の掛け声の下に、アメリカの言う民主化を推進している。その結果は国家の統治力を妨げるほどの国民(住民)パワーの巨大化である。米艦載機岩国移転についての住民投票がいい例である。国家と国民の安全は、法を超越した国家と民族死活の最重要問題である。核兵器を持たず、憲法9条を遵守しなくてはならない日本は自国の安全を守る能力がないから、日米安保に頼ることになっている。日本の安全をアメリカに委ねているからには日本がアメリカの軍事再編成に協力すると同時に、日米共通の仮想敵国中国に対するアメリカの東アジア軍事戦略を共有するのは当然である(自衛隊新防衛大綱で確認)。

米艦載機の一部岩国移転の賛否を問うた住民投票をアメリカはどう見ただろうか。答えは「日本の統治力は地に落ちていて信頼に足らぬ」である。「国家の安全と安全のための行動にはいかなる法も、常識も、いわんや地方政府や住民の権限は遠く及ばない」。できることは犠牲に対する保障を求めることだけである。これが世界とアメリカの常識。だから住民や地方自治体が日米共有の軍事戦略の一環としての軍事行動の賛否を問うなど「あり得ないこと」である。

しかし、そうした「アメリカの常識」に反する日本を作り、さらに民主化しようとしているのは他ならぬアメリカである。かといって日本なしに今世紀のアメリカの軍事指針、米軍再編成は進まない。「あちら立てればこちら立たず」……。それが今の日本に対するアメリカの悩みであり、自ら作ったジレンマである。また、これは日本にとって新たな対米政治カード創造のチャンスでもあるのだが……。

追伸:
「日米安保は片務条約である」「沖縄はアメリカが無条件で一方的に返還した」というのはすべて真実ではない。もしそうであったなら、トルーマンもニクソンも国家に対して「背任罪」を犯したことになる。日本の安全が立脚している(恐ろしい)真実は、「増田俊男のおもいっきりトーク」(伊豆の豪華旅館)でお話しします。
満員御礼! キャンセル待ち状態ですが……。
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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)