第366号  (2006年07月06日 国会議員号)

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分かっていますか?北朝鮮連続ミサイル発射

北朝鮮の連続ミサイル発射に対し、「北朝鮮は何の利益にもならないことを何故?」(小泉首相)、「アメリカと北朝鮮二カ国間の問題ではない」(ブッシュ大統領)と日米両首脳は述べている。今回の連続ミサイル発射の真意は、北朝鮮が1994年の「米朝枠組み合意」以来一貫して、主張してきた「核廃絶と交換に国体維持保障と経済援助」の早期実現にある。北朝鮮にとっての脅威は、先制攻撃でイラクを攻撃し、アジアを軍事覇権下に置くアメリカのみ。従って何事につけ北朝鮮に説得力があるのはアメリカだけである。6カ国協議参加国も国連常任理事国もアメリカを除けば北朝鮮にとって脅威はないから発言力もない。

北朝鮮が求めている国体維持と経済援助を保障できるのはアメリカだけである。従って、北朝鮮にとってブッシュの言う「米朝二国間の問題ではない」は、「ブッシュは本当は北朝鮮の核廃絶を望んでいない」ことになる。6カ国協議や国連安保理で北朝鮮問題を解決しようとするのは、北の核廃絶を口にしながら実際はそれを意図的に先延ばしすることに他ならない。


「もし北朝鮮の脅威が無かったなら」を想定してみよう。

アメリカの軍事再編成もTMD(戦略ミサイル防衛)も中国と北朝鮮を仮想敵国としている。高額なミサイル迎撃用のイージス艦を日本がアメリカから購入し続けるのも北朝鮮のミサイル脅威のためである。日米軍事指針上共通の仮想敵国は北朝鮮であると自衛隊の新防衛大綱に明記されている。北朝鮮の核廃絶による脅威の消滅はアメリカの極東アジア軍事戦略上重要な仮想敵国の消滅を意味する。そればかりか、日米安保不要論にさえ発展しかねない。だから、アメリカは北朝鮮の核廃絶合意を望むと言いながら先送り戦略を採っているのである。

今回の北朝鮮の連続ミサイル発射は、いつまでも北朝鮮の核廃絶合意と安全保障を先延ばし続けるアメリカに対する「苛立ちと追い込み」である。北朝鮮はアメリカが二国間協議に応じるまで脅威のデモを続けるだろう。そして最後のカードは、日本とアメリカの更なる経済制裁を誘導して「北朝鮮経済破綻」を演出して見せることである。アメリカの金融制裁(海外銀行口座凍結)の打撃は大きく、これ以上の経済制裁を受ければ北朝鮮経済は完全に崩壊する。そうなれば「窮鼠猫を噛む」の軍部の暴発は避けられず、ミサイルは日本海止まりではなく沖縄の米軍基地に着弾するだろう。何十万の難民が韓国に押し寄せる。日本にも難民ボートが押し寄せる。「北朝鮮は崩壊しますよ。それでいいのですね」と云うカード!

今アメリカが米朝二国間協議に応じればアメリカは北朝鮮の脅しに屈したと世界から嘲笑を買う。かといってこのまま放置すれば、二国間協議に追い込まれる。二国間協議になれば、北朝鮮はアメリカに安全保障条約を条件に核とすべての大量破壊兵器廃絶を誓い、廃絶完了まで国際機関の監視を認める。アメリカと北朝鮮との安全保障条約が問題のすべてを解決することが世界に分かる。世界の前で二国間協議が開かれたならアメリカは北朝鮮の要望を拒否できない。拒否したら、ブッシュが欧州訪問した時フランス国民が突きつけたプラカードのように、「世界のテロリストはアメリカだ!」になってしまう。国際社会の一員になりたいばかりに、世界から孤立してまでアメリカを追求する北朝鮮!

さあ、どうするアメリカ?


                                      

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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)