第380号  (2006年10月04日 国会議員号)

増田俊男事務局 http://chokugen.com
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北朝鮮の脅威

私は7月と9月にワシントンに張り付いていた。米議会開催中であったことと、7月は北朝鮮ミサイル発射、イスラエルのレバノン侵攻があったからである。北朝鮮のミサイル発射は、アメリカでは4月からアメリカの独立記念日に行われることは分かっていたし、イスラエルの軍事行動についても、7月の攻撃開始を前提に、議会はイスラエル軍事援助決議を決めていた。北朝鮮のミサイル発射効果は、日本がミサイル攻撃にまったく無防備であることが認識され、迎撃ミサイル配備や、ミサイル防衛基地建設が急がれることになった。

今後、安倍内閣でミサイル防衛基地の予算が論じられることになるが、その額は9兆円にも及ぶと思われ財政難の今日論議を呼ぶことだろう。北朝鮮のミサイル発射に対して日本は過剰に反応したと韓国からさえ嘲笑を買ったが、時が経つと忘れるのも早い。アメリカにとって、日米共同ミサイル防衛基地建設は米軍再編成の一環であるが、実は小渕内閣時の計画からかなり遅れをきたしている。ここで一気に日本に予算化させて建設を急がせなければならない。

だから、北朝鮮のミサイル発射に続く核実験は、忘れかけた北の脅威を日本に思い出させるのには好都合である。アメリカは北朝鮮に対して金融制裁だけに止まらず、偽札や麻薬の取り締まりを断行。日本も経済制裁を強化することで北朝鮮の軍事脅威を挑発している。結果は日本の防衛費増額(小渕内閣時は5兆円と言われたが、今日では9兆円とも言われている)とミサイル防衛基地建設計画早期決着となる。

一方、北朝鮮の核実験問題が国際化すればするほど、日米は中国に北朝鮮説得を求めることになり、またもや中国の政治的存在を大きくする。安倍首相が中国、韓国と首脳会談をする直前に核実験を発表した北朝鮮の狙いは、日本に対する両国(中国・韓国)の立場を強めることにある。日本は両国に北朝鮮の核実験の中止を頼まざるを得ないからである。


日本のカード

アメリカは北朝鮮を6カ国協議に復帰させるために、「アメリカは北朝鮮に軍事行動を取らない」と声明を発表している(ライス国務長官が日本で発表)。したがって、現在の日本にはアメリカの核の傘が存在しないと考えるべきである。今日の世界で主権を守る唯一の手段は核を持つことであることは、北朝鮮によってもパキスタンによっても証明された。サダム・フセインのイラクは核を持っていなかったからアメリカから武力行使を受けたのである。核の傘を失った日本は当然核武装へ進む権利がある。

日本の核武装をもっとも恐れるのは中国や韓国だけではない。アメリカも望まない。従って安倍首相は北朝鮮の軍事脅威がエスカレートする中、アメリカがいつまでも6カ国協議という「北朝鮮問題先送り手段」に固執して米朝2カ国会議で解決しようとしないなら、「日本も核武装を考えざるを得ない」とほのめかす必要がある。

「モノを言う日本」を目指すなら、「核の覚悟」が重要である。日本の核意識は必ずアメリカの対日政策を慎重にさせる。




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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)