第379号  (2006年09月14日 国会議員号)

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安倍「長期」政権のための秘策

自民党総裁選たけなわだが、派閥の大半が安倍支持だから、次期総裁はほぼ間違いなく安倍晋三氏だろう。先の「時事直言」で安倍氏だけが、国の理想の姿と国のあり方、そしてそのための憲法改正を公約として打ち出している。一国のリーダーになろうとする者として、国の理念とあるべき形を明確にするのは正しいし、当然のことと言わねばならない。さらに安倍氏は「日本には顔がない」と言われてきた点を改めるため「国家安全保障会議」と「経済諮問委員会」を官邸の下に配備する。谷垣、麻生両氏からは国体のイメージと理念が見えてこない。「どういう日本を運営しようというのか」との海外からの関心に答えているのは安倍氏だけである。

安倍政権が長期政権になるか、私が以前から危惧していた「リリーフピッチャー」で終わるかは、来年夏の参議院選挙に懸かっている。2001年の参院選で当選した自民党参議院議員の30名以上は確かな地盤もなく、単に小泉人気だけで当選した者であるから、次期選挙で再選されることは難しいと考えられている。たとえ何人でも自民党が現議席を減らせば「敗北」となり、「安倍抵抗勢力」が結成される可能性がある。小泉氏が野人なら、安倍氏は貴公子(プリンス)。しかし安倍氏も小泉氏同様、信念、理念を極端なほど明確にするタイプなので敵ができやすい。とにかく安倍氏にとって、参院選挙に勝つことが氏の今後の政治生命を決する。

来年の参院選で安倍政権が民主党に大勝するためには、単に参院選にせず衆参両院選にすることである。昨年の衆院選は「郵政民営化選挙」だった。自民党内での郵政民営化に対する賛否両論を衆院選で決着をつけることになったため、まるで総選挙が自民党総裁選の様相となった。民主党は完全に蚊帳の外に置かれ、結果は民主惨敗、抵抗勢力に代わって80名の刺客が当選した。自民が次期選挙で優位を保つためには、単に参院選挙でなく、常に自民に有利に働く衆参両院選挙にすればいい。そして争点を、昨年の郵政民営化に代わって「憲法」にすればいい。

民主党最大の弱点は憲法であることを忘れてはならない。現在の民主党は憲法に対して統一見解は出せない! 強い憲法改正論と平和憲法維持論が存在していて双方譲らない。また、民主党の支持基盤である労働組合は憲法改正反対である。安倍内閣が次期選挙を、衆参両院の「憲法選挙」にすれば民主は解党的打撃を受けて敗退する。前回自民を離党したが、今や憲法改正賛成で復党を予定する議員、当選が危ぶまれている2001年当選組の参議院議員、そして地盤のない、いわゆる小泉刺客全員を当選させるに十分なだけ民主党は議席を失うだろう。

国を挙げての憲法論議が起きれば、民主党は分裂、野党連合のキャスティングボードを狙う国民新党などもいまさら憲法改正反対はできず、本筋で憲法論議から外れ、結局は憲法選挙の蚊帳の外に追いやられる。「衆参両院選挙」「憲法選挙」、これで安倍政権は民主に圧勝し、国民新党などを蹴散らし、長期政権に向かうことができる。



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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)