約束された日本経済 今、世界の主導権は権力から「見えざる手」に移りつつある。米国のブッシュ大統領がアメリカの使命として連呼する「世界に自由を拡大する」とは全世界を自由市場にすることであり、それはドル市場の拡大であり、アメリカの国益に繋がることでもある。今、世界は「小さい政府」を目指している。それは権力縮小、「見えざる手」の拡大化である。 小泉内閣が発足した翌年2002年から今日まで、戦後最長の「いざなぎ景気」(57カ月)を超える好況が続いている。注目すべきは、今回の好況は小泉内閣の緊縮財政の下で起こった事実である。安倍内閣の経済と小泉内閣時代の経済とが大きく異なる点に注目しなくてはならない。それは小泉時代の企業収益は金融緩和、ゼロ金利政策に支えられ、さらにリストラの恩恵を受けて伸び続けてきた点である。しかし2006年3月の量的金融緩和の解除、続く7月のゼロ金利政策終焉で、金利上昇、マネタリーベースはマイナスとなって、もはや金融政策による支えは失われた。 こうして迎えた安倍政権下の経済環境において企業の来年度決算予想はすこぶる良く、経常利益前年度比2〜3倍が続出している。また、企業収益が外需依存から内需依存に大きく変化しつつある。現在問題視されている「実感なき好況」は外需依存の結果であり、今後は内需依存で好況が国民に広く実感されるだろう。「風が吹けば桶屋が儲かる」という例えの通り、説明は難しいが、歴史的に日本経済の好況と戦争は連動しているのである。1950年の朝鮮戦争、続くベトナム戦争、米ソ冷戦。この間、日本経済は右肩上がりで伸び続けた。1980年から1990年の間、日本は“Japan as No. 1”と言われ、邦銀は世界ランキングの1位から10位までを独占した。ところが1991年、米ソ冷戦が終焉すると、バブル崩壊と共に日本経済は下降線をたどり、その後10余年間200兆円になんなんとする不良債権解消のための死闘が続いた。 ブッシュ政権と小泉政権誕生の年2001年の9月11日、アメリカで同時多発テロが起こった。アメリカは同盟国、有志連合諸国を巻き込んだ戦争時代に突入した。アメリカは2020年まで「テロとの戦争」を続行すると宣言、以後アフガン、イラクを占領し、いまやシリア、イランをターゲットに軍事戦略を進めている。日本経済はブッシュの戦争宣言直後(2002年)から突如好況に転じ、現在に至っている。日本経済は世界が緊張し、戦争状態になると途端に好況になることが歴史的に証明されている。従って歴史的には、日本経済は2020年まで好況が約束されていることになる。 資本主義経済下では国民のマインドが経済に大きく影響する。国民の消費マインド、企業の短観などから景気の先行きを判断するのはそのためである。その意味で株価と不動産価格は国民と企業マインドに大きな影響を与える。私は昨年から2006年の「秋相場」の確実性を機会があるごとに繰り返し述べてきた。それは11月7日のアメリカの大統領選を考慮した、ブッシュ政権による不自然とも言うべきドル高、株高戦略を先刻知っていたからである。 米中間選挙後はアメリカの株価とドル相場は経済ファンダメンタルに従うことになるので、FRBの利上げ終焉と今後の日銀の利上げで日米金利差は縮小するから、2007年に向けて円高・ドル安となる。内需拡大で底固い好況を持続する日本経済はさらに好条件を迎える。それは郵政民営化資金の市場化である。さらに2007年は三角合併法が実効される年。外資の対日M&Aは日常茶飯事になる。まさに2007年の株式市場のキーワードはM&Aである。 日本企業の防戦策は基本的には自社株買いによる株価上昇と株主優遇策しかない。300兆円を越す郵貯資金を預かる金融機関が日本企業のM&A 対策を支えるのは当然のこと。株式市場は「株価上昇競争」の状態になる。これを読む海外ヘッジファンドが事前に押し寄せてくるのも当然。拙著『空前の内需拡大バブルが始まる!』(ダイヤモンド社)が今月末ごろ全国書店で発売される。日本を取り巻く地政学的リスクを明解に解説しながら、2007年は人類が未だかつて経験したことのない経済繁栄が日本に訪れることを解説した。経済大繁栄時代の宰相、安倍晋三氏は運のいい人である。いや、運も実力のうち。それは我々の運でもある。
|