第394号  (2006年12月27日 国会議員号)

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安部政権に不安を抱くアメリカ

9月からスタートしたばかりとは言え、アメリカは安倍政権にいささか困っている。それは安倍内閣がアメリカから見て、期待外れになりつつあることだ。安倍首相は、小泉改革を踏襲すると同時に、経済成長路線を採るとの指針を明らかにした。しかしながら、ブッシュ政権が郵政民営化に次いで期待し、またアメリカの金融界が強く求めてきた三角合併法に制約をつけ始めたのである。また7兆円を超える歳入増についても、財政健全化の名の下にすべて債券発行額削減に使われることになった。これで経済成長路線の真意も怪しくなってきた。

アメリカは安倍首相の就任直後から長期政権を期待しているが、造反組の復党問題やタウンミーティングのやらせ問題で国民支持率が急速に低下した。国内問題で不評なら国民の関心を国外に向けるのが政権担当者の常識である。その意味で麻生外務大臣が発表した「自由と繁栄の弧」は格好のチャンスであったのに、全くマスコミ受けしなかった。「21世紀の大東和共栄圏構想か?」などと匂わすだけで、マスコミの話題をさらうことができたのに……。アメリカには、どうも安倍内閣はまだ不安に映る。このままでは、アメリカは日本と一枚岩となって行動するのは難しい。

アメリカの中間選挙で民主党が勝利した結果、民主党が2007年からの議会を制することになったが、その影響はすでにブッシュ政権の外交政策の変化に現れている。アメリカの最も重要なパートナーである日本はアメリカの変化に迅速に対応しなくてはならないのに、どうもその兆しが見えない。アメリカが大変化をする重要な時期に、安倍首相はブッシュ大統領との首脳会談をヨーロッパ訪問を終えてから、とした。訪米時期について、たとえアメリカに説明しても、世界の目には日本がアメリカを後回しにしたと映る。それでもアメリカに説明しさえすればいいというセンスが幼稚である。

国際政治ではこうした微妙なことが誤解を生んだり、何でもないことを難しくしたりする。小泉内閣のアメリカ一辺倒から、安倍内閣は多面外交を打ち出しているのは理解できるが、時と場合によっては、ちょうど電撃的訪中・訪韓のようなパーフォーマンスも必要である。安倍氏が就任早々日中首脳会談ができたのは、9月に訪中したポールソン米財務大臣に負うところが大きかったことを忘れてしまったのだろうか。

アメリカ経済にとって中国経済の影響度が日増しに増大しているので、ブッシュ政権は中国通の元ゴールドマンサックス会長の(前記)ポールソンを財務長官に任命し、中国との経済面での連携を強めている。政治面でも、北朝鮮核問題を、いわば中国に下請けに出すなどして中国重視路線を採っている。とは言え、あくまでも中国がアメリカの仮想敵国であることに変わりはない。なぜなら、中国軍事プレゼンスは増大し続けているし、中国はロシアと共にドルに対する挑戦を

自民党総裁選の時点では、安倍氏の対北朝鮮強硬路線が追い風となった。選挙前の北朝鮮のミサイル発射、核実験に対する(当時幹事長の)安倍氏の強硬論は安倍支持の根底をなした。しかし、もはやブッシュ政権の中枢はネオコン主導からCIAと国務省主導に移り、アメリカの政治戦略は軍事力背景(力の意志)から「会話路線」へ変化した。

世界の政治・経済の主役であるアメリカの政治戦略の基本が変化したのに、相変わらずの北朝鮮強硬路線一辺倒では日本は孤立するし、すでに北朝鮮は日本孤立戦略を採っている。安倍支持の根底をなした強硬路線に代わって国民の支持が得られる新路線を打ち出す準備も見えない。

北朝鮮問題においても、対中国戦略においても、日米が戦略を共有することが日米にとって重要であることは言うまでもないが、「6カ国協議で成果が期待できないなら参加してもしょうがない」などという安倍内閣首脳陣の言葉がワシントンに聞こえてくる。これではアメリカの安倍内閣に対する懸念は増すばかりだ。こんなことでは、マッカーサーではないが、また安倍内閣の政治年齢が云々されかねない。

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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)