すべては過去の話だが…… 私は、8月2日の本稿で、当時若干円高に触れていたので、「……安い円を買って米資産を買っていたヘッジファンドが、(将来の米利下げ、日本利上げを読んで)ドル資産を売って円を買い、円の返済に回るので円高になり、円高になると日本の生保がこの時とばかりドル資産(米債)を買う。こうしたシーソーゲームを繰り返している時、アメリカで信用収縮が起きたらどうなるだろうか……」と先行きの暴落を予告していた。 すると8月9日、ECB(欧州中央銀行)がアメリカのサブプライムローン焦げ付きによる欧州金融機関への信用収縮の拡大に対して、先手を打って約15兆円規模の資金の市場投入を行った。続いてFRB(米連邦準備理事会)も10日、約5兆円規模の資金投入を行い、9月18日のFOMCでの利下げをほのめかした。信用収縮の規模が掴めない市場は、世界主要国中央銀行の大規模資金投入規模に驚き、信用収縮が想像を絶する規模と判断し、株安がアメリカ、欧州、日本、アジアを走った。 私は8月13日の本稿で「世界の中央銀行が資金供給の窓口を必要な限り開け続けることを決めた以上、もはやサブプライムローン問題は解決した」と述べた。「ただし今後、銀行による(住宅金融機関への)資金凍結や大手ヘッジファンドの破綻などのネガティブニュースが出てくるので不安定相場は続く」と付け加えた。 すると、アメリカのサブプライムローン市場の約80%のシェアを持つCountrywide Financeの危機が伝わり、またしても世界的株価大暴落となった(ニッケイは874円も下げた)。そして先週、NYダウもニッケイも上げ相場となり、ニッケイは18日までの下げをおよそ半値まで回復した。 FRBの真の意図 今回のFRBの措置について、市場で大きな「誤解」が一般化しつつあるので正しい説明をしておきたい。多くの評論家、アナリストの言う中央銀行によるサブプライムローン問題の解決も、また先週の株価回復の理由も、FRBの真の意図を見誤っている。FRBが公定歩合まで下げて(0.5%)資金供給をした先はBank of America, CITIBANK等大手4行である。しかも、資金供給対象となっている大手銀行はサブプライムローン関連融資を引締め、停止、または凍結しようとしている。 Contrywide Finance等大手数社を救済したのは、それらの金融機関がサブプライムローン市場の約90%近いシェアを持っているから。他の何百、何千の弱小住宅金融機関に対しては、資金凍結、追加融資拒否、資金凍結等で破綻へ追い込むのが資金供給を受ける大手銀行とFRBの暗黙の了解である。 3社(または4社になる可能性あり)はすでに救済され、他の弱小金融機関には融資しないのに、なぜFRBは今なお大手銀行に資金供給体勢を取り続けているのだろうか。それは今回のFRBの措置の真の狙いが、サブプライムローンは口実で、実は他にあったからである。 6月にサブプライムローン問題が明るみになり、いくつかの住宅金融機関が資金難に陥り、信用収縮の拡大が現実になっていたのに、なぜ7月にNYダウが史上最高値の1万4000ドル台を突破したのか。一体何が信用不安の中でNYダウを天井まで押し上げたのか。 資金供給は株価を押し上げる積極的措置 それは「M&A」と「企業業績」であった。したがって、今回のFRBの措置は大手銀行のM&Aと企業向け融資枠拡大が目的で、信用バブル温存となったサブプライムローン市場の信用管理を確実にするために、大手銀行に僅かな資金を割かせ同市場を数社の寡占にしたのである。 しかし、資金供給の真の目的はまったく別にあった。株価の下落を食い止めるための消極的措置ではなく、株価を押し上げるM&Aと企業業績向上のための積極的措置だったのである。分かりやすく言うと、「大手銀行がしたくないことのためではなく、したいことのための公定歩合の下げと資金供給」だったのである。 何百何千の弱小住宅金融機関破綻の報道を適度に織り交ぜながら、9月18日まで株価は平均的には上昇のシーソーゲームといったところか。10月円高、株高はすでに過去のことだが、9月18日のFOMCの(利下げをするかしないかの)決定もすでに過去! となった。この件については、次回「私の9月18日の日記」を振り返ることにする。
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