第434  国会議員号  (2007年10月9日号)

増田俊男事務局 http://chokugen.com
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予測の根拠――アメリカ編

私は今まで何度か肝心なときに予告をし、当たったことが多かった。古くは1ドル=140円台だった1998年、「10月初旬、110円になる」と円高予想、的中。2001年2月から「アメリカの天地が逆転し戦争が始まる」と9.11を予想。最近では「今こそ株を売って、10月まで現金を枕に休憩しましょう」と6月から7月にかけて言い続けた。その後、ニッケイは1万8000円台から一気に1万5000円台まで急落したのはご存知の通り。

私には独特の思考方法がある。それは“If I were an owner of America. (もし私がアメリカのオーナーなら……)”と、アメリカのオーナーになり切って思考するのである。アメリカの支配者とは、決してホワイトハウスやFRB議長、財務長官や議会(国会)ではない。アメリカには、彼らにアメリカの国益達成のために指示を与える「見えざる勢力」が存在する。それは先の大統領選で圧倒的に優勢だったアル・ゴアを落としてブッシュを勝たせ、また2001年9月11日、WTC(ワールド・トレード・センター)に飛行機が激突したように見せかけ、ビルを間違って飛行機の入射方向へ倒してしまった勢力である。

アメリカの国益とは、アメリカ経済の恒常的「三つ子の赤字」(貿易、財政、対外債務)の永久的先延ばしと、アメリカ存在にとって最大リスクである「ドルの防衛」と、10年以内に枯渇する原油資源(エネルギー資源)の確保である。この国益の達成にはアメリカの存在が懸かっている。毎秒増大する赤字補填のためには、ドルの増刷とともに世界から資金をアメリカに集中させ続ける必要がある。ドル乱発による通貨インフレおよびドル暴落を防ぐためにはドル市場拡大によるドル需要増大を図らねばならず、また、エネルギー資源確保のためには中東やカスピ海中周辺などの油田地帯をアメリカの政治支配下に置かねばならない。


アメリカの国益正しく認識する

アメリカが世界に標榜する自由の拡大とは、ドル市場拡大・自由市場拡大である。恒常的にドル需要増大化を計るためには、ドル基軸通貨制の維持が必須となる。アメリカの自由拡大を拒む者、ドル基軸通貨制に反して(国際)貿易決済通貨をドル以外の他通貨に切り替える者はアメリカの敵であり、アメリカは決して許さないし、また、その者を排除するために手段は選ばない(正当防衛)。

2000年11月、サダム・フセインがイラクの原油決済通貨をドルからユーロに切り替えると、いくつかの反米資源国が従った。その結果、ユーロは同年から対ドルで上昇に転じ、今日まで下がることを知らない。アメリカの存続を揺るがす国はすべて「ならず者国」である。しかし、ならず者国でも民主革命(オレンジ革命のウクライナなど)を起こしドル市場拡大が可能な場合は生かす。そうでない国(アフガンやイラクなど)は軍事力で抹殺してアメリカ傀儡政権を樹立する。

アメリカの軍事力はアメリカの国益追及(ドル市場拡大とドル基軸制、資源確保)を阻止する「ならず者国」を抹殺することが目的であって、決して今日のWar on terror(テロとの戦い)のテロではない。テロは、イラク攻撃の理由にした大量破壊兵器同様、アメリカ国民と世界世論の支持を獲得するための名目でしかなく、それによってアメリカの軍事侵略は正当化される。

イラク戦争の結果、フセインがフランス、中国、ロシアに広大な油田を与える契約は反故になったし、イラクの原油決済通貨はドルに戻り、さらに内戦による都市破壊によって毎日創造されるインフラ復興需要はアメリカ産業を潤している。イラク戦争はアメリカの国益にとって、まれに見る大成功例なのである。


米大統領はその時々の国益に適った人物が選ばれる

世界資金を自国へ集中させるために、アメリカは3種類の産業を順番に成長センターにする戦略を取っている。その第一はITなどテクノロジー産業であり、第二は不動産と金融商品を、そして第三は軍事産業を中心とした製造業を成長センターにすることである。クリントン時代が第一、ブッシュの前半が第二で、後半とその後が第三である。

第一から第二、第三へと移動する際は、それぞれの成長センターをバブル化し崩壊させる。光ファイバー網やITインフラ、不動産資産、そして兵器増産設備等の資産増をアメリカに与えた世界からの流入資金は、バブル崩壊と同時に一瞬にして大損失を蒙り、その損失分はアメリカの資産増と対外債務の減少となる。

アメリカの政治・経済戦略とは、第一から第三までのサイクルをスムーズに、または強引に押し進めることである。第一を推進する政権はクリントンのようなソフトタッチが好ましく、第二ではハードと若干ソフト(タカ派が政権を去った)のブッシュが適役。2008年の第三期は、共和党のハードライナー(強硬派)の戦争一点張りの大統領がふさわしい。

アメリカのオーナーは、この基準でそれぞれ時の成長センターにふさわしい大統領を選択する。いま人気No.1のヒラリー夫人はウォール街・金融セクターがバックなので次期大統領のチャンスは少ない。やがて軍産複合体を代表する共和党の新人が登場して本命となるだろう(その名は追ってお知らせします)。

このように、私の政治・経済予測の根拠はアメリカの国益の認識と、それをいかに効率的に達成するかの戦略と、その読みの中から生まれる。

次回はヨーロッパ編、その次は中国編となります。



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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)