第436  国会議員号  (2007年10月22日号)

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ブラック・フライデーは日本株上昇トレンドの出発点

先週、「増田俊男の本日の目からウロコ」(ラジオ番組:月〜金:ラヂオもりおか)でリスナーから株価の見通しを聞かれ、「今後、サブプライムローン問題が原因の暴落は起こらない。これから下げはあるが上げ過ぎの調整だと思っていい。かなり下げても2〜3週間経って平均してみれば上昇していることが分かるだろ」と述べ、さらに「1万6700円くらいまで下げたら買いだと思う」(当時は1万7200―1万7100円台)と付け加えた。講演会、勉強会、実践経済セミナー(テープ・CD)でも「10月からは株も円も上昇」が、私の一貫した見解である。

先週の金曜日(19日)、ニッケイは前日比291円下げて1万6814円となった。その後(アメリカ時間、金曜日、19日)、ニューヨーク市場でNYダウ平均は前日の下げに続いて366.94ドル下げ、1万3522.02ドルで終えた。

まさに日米同時株安、ブラック・フライデーであった。1987年10月19日のブラック・マンデーからちょうど20年目のネガティブ心理に加えて、一種の「バブル感共有」にNY市場が反応したと言えるだろう。アメリカの各種株価指標は2007年だけで14%強、上海株は前年比130%、「日本を除く」アジア株も総じて40%アップになっている。

サブプライムローン焦げ付きに端を発した8月中旬の世界同時株安と、今回のNY市場のバブル感共有不安の影響を受けてニッケイも下げたが、市場が冷静になれば、先進工業国中日本だけがサブプライムローン問題の被害が少ないこと、また日本の株価だけにバブル感がないことが認識される。

1987年のブラック・マンデー直後、当時新任のFRB議長グリーン・スパンとベーカー財務長官は、市場への資金供給と財政赤字削減政策を市場にアピールして暴落の連鎖を食い止めた。いま私は、G7のタイミングに合わせてワシントンとNYで経済講演を行い、一方で経済人との交流を深めているが、今回も今までアメリカの市場関係者に言い続けてきたことを繰り返している。


米経済は構造変化の狭間

それは、アメリカ経済の牽引が内需から外需依存に移行する経済構造変化の狭間にある現在こそが最も市場混乱リスクが高い時。新築住宅減による消費減を輸出でカバーするまでの間、はたして利下げだけで持ちこたえられるだろうか。リセッションの危機は避けられないのではないか。テロとの戦争を遂行する中、今すぐ財政赤字削減ができないなら、思い切った減税策を打ち出すべきではないかと主張している。

幸い、私の講演に参加したNYSE(NY証券取引所)の幹部の紹介で、連邦住宅金融機関(ファニー・メイなど)、商業銀行、投資銀行(証券会社を含む)と証券監視委員会を司るトップに直接意見を述べるチャンスが与えられた。いい機会なのでアメリカからは分かりにくい日本の投資心理や日本人のDNAについても知ってもらおうと思う。


投資潜在能力を温存する日本

さて、今日の世界市場の中の日本の株価であるが、バブル感はまったくなく、国は異常なほど財政再建に専念している。ブラック・マンデー時の外人の持株シェアはわずか1割だったのに、今は6割になっている。日本の個人は1500兆円強の金融資産(GDPの3倍)を持ち世界一の金持ちだが、依然として成人の1割強しか株式投資をしていない(アメリカは50%)のだから、日本は先進国中No1.の潜在株式投資力を温存している。郵政民営化実施で、郵貯銀行は300兆円を超える資金の中から株式投資運用準備中である。

こうした環境下にある日本市場を世界の投資マネーはどのように見るだろうか。その判断が今後の日本の株価を決定する。その答えと結果は、今までの私の言、「10月から株も円も上昇」である。今日の日本経済は20年前とは大きく異なる。当時の日本では企業は財テクに走り、主婦は買い物カゴを持って証券会社へ通った。機関投資家のファンドマネージャーは「買い注文」しか知らなかった。今日のように「公共投資削減」が政策の中心課題となることなどなかった。


日本は金融不安措置をすでに完了している

それに比べて今日の日本はどうだろうか。公共投資を押さえ、財政赤字削減に専念している中で貿易収支の恒常的黒字が続いている。87年のブラック・マンデー直後、アメリカ金融当局が急遽手を打った措置を、今日の日本はすでに完了して世界の投資マネーの決断を待っている。ブラック・マンデー後、NYダウがなだらかな上昇だったのに比べて、ニッケイは急上昇に転じ、89年12月29日3万8915円を付けるまで上げ続けてNYダウの時価総額を上回った。NYに代わって、東京が世界の金融センターになったのである。

2007年10月19日のブラック・フライデーは、ニッケイが永い眠りから目覚めた日である。バブル感を共有する市場から、バブルを知らぬ市場へマネーが移動する。眠りが長かったほどに目覚めた後の活躍は長いのである。

* ワシントンでのG7情報交換とNYの経済セミナーが終わると帰国。月末までいくつかの依頼講演とインタービューがある。その後、10月末からハワイへ行く。11月上旬は恒例のハワイツアーである。“ Royal Hualalai Garden”(サンラコーヒー組合所有)の完成祝いとコナコーヒーフェスティバル参加のハワイツアーがある。1区画6000坪のオーナー(投資家)専用宿泊施設も完成。豪邸と庭園、それに海を見下ろすベランダの前には2000本のコーヒー樹の植え付けが終わった。見学者から「自然を生かした最高のリゾート」とお褒めの言葉を頂戴している。Security強化のハイエンドGate Communityとして世界の富豪の関心が高まっているとは専任不動産会社からの情報。

今回のハワイツアーは、投資家の皆様にとっては最後の「収穫祭」となる。論より証拠!



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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)