第442  国会議員号  (2007年12月11日号)

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逆信用バブル!

「逆信用バブル」とは私が作った新語である。信用バブルの逆、すなわち「過剰信用喪失」である。アメリカの住宅ローン総額は約1.3兆ドルだから円換算で150兆円前後。その10%がサブプライムローンだから債権総額は約15兆円。それが複雑に証券化されて4500億ドル(50兆円)まで膨張したのである。その価格が今40%まで下落しているのだから約3000億ドル(33兆円)の信用収縮が起こっていることになる。

ECB(欧州中央銀行)とFRB(米連邦準備理事会)は金融不安が本格化し始めた8月9日から潤沢に資金供給を続けている。ECBは8月9日には948億ユーロ(約15兆円)を、続けて10日には、610.5億ユーロ(9.8兆円)、13日、77億ユーロ(1.2兆円)の資金供給を行っている。またFRBも8月9日に240億ドル(2.8兆円)、10日に380億ドル(4.5兆円)、15日には70億ドル(8200億円)の緊急資金供給を行い、その後11月15日に472億ドル(5.3兆円)を追加している。ECBも年越し資金としてさらに追加資金供給を行うと発表している。さらに8月9日以降日本を始め主要先進国はことごとくECBとFRBに従って資金供給に走ったから、世界全体での資金供給額はサブプライムローン問題による信用収縮総額を優に上回っている。Credit Crunch(信用収縮)は、所詮金融機関の資金繰りの問題だ。これだけの資金供給があったらまったく問題が起こるはずがないのに、いまだにCITI Groupがアブダビ投資庁に75億ドルの援助を受ける有様である。

いったん信用バブルになるといくら金利を上げても収まらないように、逆信用バブルもいくら資金供給をしても、また利下げをしてもすぐには収まらない。しかし確実なことは「バブルは必ず崩壊する」ということである。「逆信用バブル崩壊」とは、収縮し過ぎた信用が正常化し、下落し過ぎた住宅価格も正常に戻ることである。


逆信用バブルはチャンス

今のところアメリカでのサブプライムローン問題の実害は金融機関に限られているが、逆信用バブルが長引くと、つまり逆信用バブルの崩壊に時間を要すると、現在の下がり過ぎている住宅価格がさらに下がり、ホームオーナーのCredit line(信用枠)がさらに下がるため、これが消費減退となって実体経済に被害が及ぶことになる。

そうなると資金供給、利下げ、さらに金利の固定化などの目先の問題先送りではこと足りず、金融機関への公的資金投入が必要になってくる。12月に入ってから世界的に株価も回復してきたので、これ以上の逆信用バブル進行もないと考えられる。信用バブル崩壊で損をした投資家は、逆信用バブル崩壊で挽回できる。



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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)