第446  国会議員号  (2008年01月07日号)

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米経済―スタグフレーション!?

年初の株式市場は、日米ともに「暴落」で始まった。NYダウは256.54ドル下げ12,800.18ドルとなり2007年のスタート時に逆戻り、一方ニッケイは616円下げて14691.41円で昨年来最安値となった。昨年8月以来、サブプライムローン問題で世界的に信用収縮がスパイラル化し、なかんずくアメリカの金融機関は軒並み資金繰り悪化状態に落ち込み、実体経済に悪影響が広がり始めた。

住宅バブル崩壊で新築住宅軒数が激減、また住宅価格が下げ止まらないため世帯の含み資産収縮で消費減退、さらに雇用の伸び止まりと原油価格高騰によるガソリン代上昇、ドル安による輸入物価上昇で価格インフレが加速、等々でアメリカ経済がリセッションに陥るリスクが高まっていると市場は認識し始めた。景気後退とインフレ加速によるスタグフレーションに陥ろうとしているというのだ。

私はかねてから、サブプライムローンの問題は金融政策だけでは解決できない。利下げ、資金供給増に加えて財政出動をしなければ解決が長引き、解決が長引くと実体経済が不況に陥ってしまう危険があると言ってきた。今月の29、30日のFOMC(米連邦公開市場理事会)で思い切った利下げ(1%)の決定が期待されると同時に、財務省から財政出動の発表が行われると思われるので、株式相場は急上昇に転じるだろ。FRB(米連邦準備理事会)は、インフレ対策は後回しにしてでも大幅利下げに踏み切ると考えられる。すでに米経済は外需依存型に方向転換しており、国際収支もここへ来て改善されている。今後は企業利益の向上が株式市場の牽引役となる。

マクロに見れば、ここのところのサブプライムローン騒ぎで米発行の金融商品(債権)は暴落して値が付かない。ということは、アメリカとしては債務を大幅に減らしたことになる。海外からの借金(債権)で建て過ぎるほどの家を建てたところでの住宅関連債権暴落だから、実際アメリカは大量の住宅を外国からただで建ててもらったことになる。サブプライムであれスタグフレーションであれ、騒げば騒ぐほどアメリカが有利になる仕組みである。

私の言う「2007年に準備して、2008年に実行」とは、2007年に借金漬けのアメリカの身を軽くする準備をして、2008年にすっかり身を軽くして、また元気に出直すということ。これが「変化」の真相である。そういう意味では、1月29、30日のFOMCは、アメリカにとっては再スタートの「祝賀式」のようなもの。

とは言うものの、抽象的でピンと来ないかも知れないので、FOMCの前の26日に米政権アドバイザーの一人であるハドソン研究所所長 Mr. Herbert London氏をお招きして「国連の真実」を明らかにする第一部の後、第二部の特集として「日米経済の根底」について“突っ込んだ”対談をすることになった。26日の後、London氏ご夫妻を温泉地へお招きしての少人数の勉強会も計画している。

アメリカ経済が不況へ向かって「流されている」ように考えるのは間違いで、「流されている」ように演出していると考えるのが正しい。戦略国家アメリカの「凄さ」を忘れてはならない。



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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)