第467  国会議員号  (2008年05月19日号)

増田俊男事務局 http://chokugen.com
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読者からの質問

皆様にも大変役に立つと思われる質問が読者から寄せられましたのでお答えいたします。

先生に二、三点質問をさせて下さい。

@政府系ファンドの件ですが、外貨準備金、年金資金等々、今黒字国家政府が利用できる資金が300兆〜500兆円以上あると聞きます。これらを世界中の優秀な人材が運用することにより、現在の税収に見合うほどの利益を得ることが出来るのでは(カタール、アブダビ、シンガポール等々の様に)といわれています。それと、その動きが世界から日本の株式市場へ、資金が流れ込むとも聞きました。先生のご意見を聞かせてください。
国が、国民に配当を渡す。税金を取るばかりが能ではないのではなどと考えてしまいます。

今後政府系ファンドの運用額が増加していくことを考えると政府系ファンドが市場で大きな影響力を持つことは間違いないでしょう。市場が警戒しかつ今後の規制強化の対象となるのは、政府系ファンドの政治的運用です。政府系であることから当然最小限のリスク管理となりますから、運用はどうしても保守的にならざるを得ないでしょう。その意味では日本市場は最適と考えられます。日銀の金融政策も保守的、政府の財政政策も超保守的、企業もソフトよりハード主導ですから、日本は先進国でもっとも保守的経済国家といえます。今後徐々に世界の政府系ファンドが日本市場を目指すのは間違いないと思います。

A外貨準備高に占める、金保有が日本は数パーセントしか持てていないのが、いつもアメリカの言いなりにならざるを得ない大きな理由だと言われていますが、如何でしょうか。先生のご意見をお聞かせ下さい。

大平内閣の時、アメリカからの要請で、日本は外貨準備の1%以上の金を持たないことを約束したと伝え聞いていますが、確証はありません。しかし常に日本の金保有が低く抑えられている事実を見ると、やはり日米間にそうした合意があったのかも知れません。最近では外貨準備高では中国が世界一ですが、当時は日本が飛びぬけて世界一でした。アメリカにしてみると日本の金保有が高まるとドル安が加速し、ドルの信認に関る問題と考えたのかも知れません。日本に野心があれば、日本が積極的にアメリカ経済に大きな影響力を与える事態にもなりかねないと恐れたのかも知れません。アメリカとしてはドルの信認低下と日本の対米影響力の増大化に歯止めを掛けておく必要があったのかも知れません。サブプライム問題と住宅バブル崩壊で金融システムが危機状態に陥っているため、現在のアメリカ経済の世界主導力は著しく低下しています。こうした時こそ日本は中国などと協力して積極的にアメリカ経済を支える戦略が採れるのですが、残念ながら今の政府にそうした考えはないようですし、また逆にアメリカの言いなりにもなりにくい状況だと思います。しかし、リスクという観点から考えれば、「何もしない日本」は最もリスクがないとも言えるのではないでしょうか。中国経済はまだリスクが高いし、成長より安定という点で、今後政府系ファンドの向かう先はやはり日本市場でしょう。私が常に述べてきた原油価格150ドル説、アメリカのインフレ進行、信用から現物、ソフトからハードという流れの中で、まだ多少時間はかかるかも知れませんが「夏相場」の基礎が固まってきたと見ています。



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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)