第512号(2009年03月09日号)

増田俊男事務所 http://chokugen.com

「買い」!

3月2日、511号の本誌で、もしアメリカの2月の失業率が7.8-7.9%上昇となったら『買いサイン』だと述べたが、実際の失業者数は65万1千人となり失業率は8.1%と発表された。「悪いニュースほど株価にとってはいいニュース」とも述べたが、これでいよいよアメリカの平均的生活水準は限界点に達し、消費は下げ止まることになる。現に消費は昨年12月からは徐々に伸び始め、世界最大の小売店Wal-Martの2月の売り上げは5.1%アップであった。6日(金)のNY株式市場の出来高は約1億株減って17.7億株だったのを見てもわかる通り投資家はもはや持株を売りつくした感がある。今現在投資家も消費者も現金を抱え込んで潜在投資・消費力は十分である。今や株価下落、消費減退の余地は無くなりつつある。市場は実体経済の先を見て動くと言われるが、ここのところの16ヶ月間を見る限り、それはとんだ大間違いと言える。今の市場は経済成長の根幹である消費の動向を軽視し、経済の主体でもない金融(銀行)の先行き不安に振り回され続けている。

消費者の節約は限界、投資家も売るものは売り尽して売って、もはや売るもの無し。消費者も投資家も抱えているのは現金。もはや「買うしかない」ところへ来ている。昨年12月から消費が伸びに転じ、実体経済は底を打っているのに市場は逆に下げ続けている。昨年からPC(プライベート・コンサルティング)を受けた方の一部に言い続けてきた、「来年(2009年)3月まで動かないでください」が果たして正しかったかどうか、これからの楽しみである。

強いアメリカ

アメリカ経済がThe Great Depression(1929年の大不況)を超える大不況に陥っているというのに何故ドルが上昇するのだろうか。答えは、Safety Heaven (安全地帯)の考えに因る。

世界共通金融不安時には国際通貨であるドルが安全地帯になるのは当然である。日本が弱体化したアメリカの銀行資産を買っているのだから日本は対アメリカ比較優位であるが、所詮円はローカル通貨。だからドル高、円安になるのである。世界の投資家が金融商品を叩き売った現金を何処の通貨に置くかとなると答えはドルになるのである。前回のCD・テープで指摘した通り、いよいよ3月になってイランのミサイル実験や北朝鮮のテポドン発射をめぐる報復問題等で一気に世界が緊張に向かいだした。「3・25」の数字を同CD・テープで警告しているのでご注目いただきたい。

オバマ大統領の金融・自動車産業Bail out(救済処置)と財政出動はBetter than nothing (無いよりはまし)だが、アメリカの株式市場だけでも16ヶ月で$16 trillion (1600兆円)の金融資産を失っているのだから、80兆円のBail outも355兆円の超大型予算も焼け石に水でしかない。それでもBetterなのだから株式市場が正常なら上がっていなければならない。

これ一つとってもいかに市場が「デタラメ」であるかが分かる。

オバマ大統領が軍事予算を20%も増額して約60兆円にしたことに市場は全く関心を示していない。市場が致命的なほど経済に重要な「消費」と「戦争」に関心が無いことは、いかに市場が真実にほど遠く、付和雷同以外の何モノでもないことがわかる。市場を経済の判定尺度とするのは真実を追求しようとしないか、あるいはする能力の市場関係者の隠れ蓑でしかない。今や消費者と投資家は「買い」の準備万端。アメリカは世界資金を引き込む最大の要因である「戦争」の準備万端。

我々は一体何を待っているのだろうか。

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