一難去らずして、また一難(アメリカ国家財政破綻?!)
3月9日の大底から、私が「売り指令」(5月11日、月曜)を出した前週の金曜日までの2ヶ月間日米を初め世界の株式が異例の上昇を続けた最大の理由は、今回の不況のけん引役となったアメリカの大手銀行が危機を脱し、アメリカ経済が不況を脱しつつあるとの観測からでした。私は「悪い冗談」と述べるとともに、超悲観と超楽観が終わってこれからが本当の相場となると言いました。
これからの市場は夢や希望ではなく「実数」(事実)がものを言うということです。
今後市場は一転してオバマ政権の財政赤字、失業、年金、医療保険等が問題となり、ひいてはドルの信任が問われることになるでしょう。
オバマ大統領が就任した時、$1.2 trillion(約120兆円)だった財政赤字は今や$1.84 trillion (約184兆円)に膨れ上がっています。4ヶ月で$600 billion (約60兆円)もの赤字拡大です。失業率は、Stress Testが近い将来9.5%(現在8.9%)になると予測しているように10%を越すのは時間の問題です。今後ビッグ・スリーが2000件相当のディラーを斬り捨てることから10万人を超える失業者が出ます。一方労働時間は戦後最短の週33.2時間に落ち込んできたので労働者の収入はさらに落ちこむことになります。国家予算の3分の1以上を占める年金、医療保険は毎年$1.trillion (約100兆円)以上に上り、最大の財政負担ですが、先週オバマ政府は2017年から年金行政は歳入で支出が出来なくなり、2037年には破綻すると発表しました。オバマは歳出削減の決め手は医療改革しかないと言う一方で、10年間で$1-1.5 trillion(約100-150兆円)かかる保険適用範囲拡大策を進めています。実現の可能性なしとまで批判されている医療保険の年間削減額$309billion (約31兆円)など焼け石に水にさえなり得ません。年金破綻防止策として、支給年齢の引き上げ、サービス(benefits)削減と低下、コスト削減をターゲットにしていますが、到底資金マイナスをカバーすることは出来ません。どれも今に始まったことではなく、長年掛け声だけで実現できなかったものばかりです。勿論年金や医療保険は国家の最大責任ですから、赤字は国民の税金で埋めますので実際に破綻することはありません。そこでオバマが増税先として狙いを定めたのが、アメリカの富裕層です。富裕層の75%はアメリカの先端技術などいつも景気のけん引役を演じてきた中小企業のオーナー達です。不況の中にあっても今なお挑戦的な層に重税を掛けることは成長の芽を摘むようなものです。「金持ちから搾り取れ」とは聞こえはいいのですが、アメリカ経済にとって自殺行為にもなりかねないのです。1939年以来年金信託金は米国債にしか投資してはならないことになっていますが、ちょうど「ある一家が毎年一家の年金から金を借り、増大する経費を払い続け、いよいよ引退する時が来たら、年金口座には自分の借用書だけしか残っていなかった」と言う話を地で行っているのが今日のアメリカです。
「アメリカの景気回復を早めるには政府が銀行を含め支援に乗り出すのではなく、無責任と言われても、一切放置して、史上最悪の事態にまで落とし込むことだ」はいつも変わらぬ私の持論です。このままでは景気回復が遅れるばかりです。
明日(19日)はお約束通り、「ここ一番!」の読者、PC(プライベート・コンサルタントの登録者の皆様に、「今週の株・為替見通し」と「アメリカ金融当局がとまらぬドル安にどう対処しようとしているか」などご報告いたします。
増田俊男の「ここ一番!」のお問い合わせは、増田俊男事務所(03-3591-8111)まで。
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