第526号(2009年05月27日号)

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北朝鮮軍事プレゼンスの功罪

北朝鮮は5月25日、2006年10月に続いて2度目の核実験をおこなった。北朝鮮の軍事関係に関する専門家によって意見は異なるが、前回の2−4倍説と10−20倍説がある。国連が北朝鮮に核実験の非難声明を発するのを待っていたように、北朝鮮は続いて2度にわたってテポドン2号を打ち上げた。その飛行距離は2,390マイルであったので沖縄はおろかグアム米軍基地まで射程距離になった。5月20日にはイランもミサイル発射を行っている。5月に入ってから急にテロリスト支援国家の軍事プレゼンスが活発化してきた。

オバマ政権はアメリカとアメリカの同盟国の安全保障を名目に早速ミサイル防衛予算を16%引き上げると共に、ミサイル防衛予算から議会がカットした$1.4 billionの復活を求めることになった。2006年10月の北朝鮮第一回目の核実験の結果日本がほぼアメリカの要求通りのミサイル防衛予算を組んだことは当時の本誌で指摘したが、今回の実験の結果、日本がアメリカから何を要求されるのか自明のことである。

さて、「アメリカの大不況の救済方法は2つしかない」とは私のかねてからの持論である。一つは前回も述べた通り、不況の赴くまま放置してどん底まで突き落とすことである。残念ながらオバマ政権は過剰救済を繰り返して、自ら財政破綻に陥りつつある。他の道は、もっともポピュラーな政策であるが、アメリカの隠れた基幹産業である軍産複合体を景気回復の牽引車にすることである。

軍事予算の増大化にとってもっとも好ましいことはアメリカの安全が脅かされることである。何度も言うが、深刻なリセッションに陥りかけていたブッシュ政権を救ったのが2001年9月11日の同時多発テロであった。

北朝鮮は6カ国協議拒否、国連安保理決議無視、アメリカ、日本、韓国、中国等からの非難無視を貫いている。その点はイランも同様である。

こうした聞く耳を持たない北朝鮮の軍事プレゼンスで最も大きな脅威を受けるのは間違いなく日本である。またイランの軍事プレゼンスで脅威を受けるのはイスラエルである。オバマがたった$1.4 billionの予算復活に苦労していることを見れば何を日本に要求してくるか見当がつく。財政破綻寸前のアメリカが今日本に求めてくる第一は言うまでもなく米国債の引き受けだ。次は第一回目の北朝鮮核実験(2006年10月)後約束したミサイル防衛費を前倒しでアメリカ軍産複合体へ払うことである。

そうすれば今後予定されているイスラエルとパレスチナ(事実上イラン)の戦争が実行に移せるのである。アメリカは日本同様中国にも国債を引き受けてもらわねばならない。しかし国連安保理での北朝鮮制裁にかつて(2006年10月)反対した中国を今度賛成に回すには中国の言い分、すなわち米国債買取りに関し裏で上乗せ金利を払わねばならない。中東で戦争が起きれば景気回復、起きなければアメリカドル暴落、超インフレになる。北朝鮮のおかげで景気回復の確率が上昇してきた。

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