アメリカの奴隷という泥沼から抜け出せない中国
昨日の「時事直言」で、「アメリカが中国に安保理で北朝鮮制裁決議に賛成してもらうためには中国に買ってもらう米国債に裏金利を払わなくてはならなくなる」と述べたところ、意味がよくわからないという連絡をいただきました。
実はわからなくて当然なのです。
少し長くなりますが、米中の経済、政治の基本からお話しましょう。
アメリカの$1.75 trillion (約170兆円)の財政赤字はすべて海外に米国債で引き受けさせることになっていますから、世界最大のSurplus
(外貨準備高)、約$1.7 trillion (約160兆円)を持つ中国にも国債を引き取ってもらうことになります。中国にそっぽを向かれたらアメリカは財政破綻も免れないなどとよく言われますが、そんなことはありません。アメリカは、財政、貿易、対外債権すべて赤字ですから外貨依存国家と考えるのは無理もないのですが、これも誤解です。アメリカは中国にも、日本にも資金依存していないのです。
中国は、外貨準備の約3割を国内資金需要に当てていますが、ドル・元為替レートから毎年約$450 billion (約43兆円)の為替差損を出しています。また現在のドル・元レートを維持するため毎月数千億円のドル買いを強いられています。別にアメリカに求められるまでもなく中国のドル買いは慢性化しているのです。いわば働き虫の中国が溜め込んだ外貨はことごとくアメリカに吸い上げられています。だから中国は月を追い、年を追い、ドル資産を増やし続けざるを得ず、そこにはまったく中国の選択の余地は無いのです。
2009年はアメリカの不況で中国の貿易黒字は減少、外貨準備もさして増えないのでアメリカは中国の外貨準備をあまり期待していません。とはいえ、アメリカは170兆円の財政赤字を埋めなくてはなりません。100兆円以上の外貨準備(すべてドル資産)をしっかり持っている国が中国の近所にありますね。また折りしも、北朝鮮が核実験とミサイル発射の軍事プレゼンス。日本無視、国連無視、中国無視、韓国無視、すべてからの批判を無視しましたが、いつものように、「アメリカ以外とは話をしない」と言っています。こうなると日本は誰の言いなりになるのでしょうか。「アメリカに敵無し」のことをパックス・アメリカーナといいます。
アメリカには政治的には全世界が束になっても勝てない世界最強の核戦力があります。核を持っていても人類に対して実験(広島・長崎)していなければ「戦力」にはなりません。核戦力の脅威は使うことではなく、「使う可能性」が脅威です。その脅威によって世界政治を支配できるのです。アメリカには経済においてちょうど政治における核に匹敵するものがあります。それは「アメリカの財政破綻」です。アメリカの財政破綻の可能性は世界経済に対する核戦力の脅威なのです。アメリカの財政が破綻したら中国の200兆円になんなんとする米資産は紙くずになります。つまり経済にとっては、核弾頭が上空で爆発するのと同じです。それを避けるためにはどうしますか。アメリカの言いなりになるしかないのです。中国はもとより、日本にいたっては選択の余地など微塵もありません。
「裏金利」を払う話に戻りますが、裏金とはマネーではなく「顔を立ててやる」ことです。ほんの少し中国の顔を立てると言う事です。これでお分かりになったと思います。もとよりアメリカは世界中どこにも頭を下げなくてはならない国はありません。ただし(金がモノを言う)資本主義が機能している間だけですが。
もう一つ質問がありました。これは今に限ったことではないのですが。
増田先生はどうして、ぴたりと当てるのですか。
それは、アメリカの主(いるかどうか知りませんが)に私自身を置き換えて考えるからです。支配者が何をするかは、支配者になってみればわかります。
※5月27日の「ここ一番!」で推薦した推薦銘柄の一点買いは来週でも遅くないが、早いほうがいい。すでに上昇に転じている。
「ここ一番!」についてのお問合せは、株式会社増田俊男事務所(03-3591-8111)まで
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