NO.14(97年11月3週号)
日本は未だ日本になってない
年間1000万人以上が海外旅行をする国は日本以外にない。
海外旅行者の数字から考えれば日本人は誰よりも世界を知り、また世界から見た日本を知っているはず。即ち世界中で一番客観的に自国を見ているはずだ。はたして日本人はどれほど自国を客観的に認識しているか、これから述べる私の「日本客観分析」が参考になれば幸いである。
「日本の根幹」はどうなっているか
「日本のステ−タス」の3本柱は、
1.日本国の根幹である日本国憲法
2.日本の国際ステ−タスを規定する国連と国連憲章
3.日本の安全に係わる日米安全保障条約
である。
1.日本国憲法の事実関係
1)日本国憲法は日本の第2次大戦敗北後、連合国(戦勝国)総司令部(GHQ)のマッカ−サ−最高司令官が作成して、1946年8月に日本の国会承認のもとに1947年5月3日に発布されたもの。
2)天皇制に強硬に反対を唱える戦勝国(連合国)ソ連の合意を取り付ける為天皇を「神聖にして侵すべからず」から「日本国の象徴」(第1条)に変更。
3)さらに日本の軍事行動を一切禁止するために「戦争放棄」(第9条)を義務付ける。
2.国連の対日「差別条項」
1)国連憲章第8章、第53条――地域的安全保障取極と地域的紛争解決について。地域的紛争が起こり紛争解決の為に地域的機関(2国又は多数の国連加盟国の安全保障機関)が強制行動をとる場合は安全保障理事会の許可を得なければならない。但しかつての連合国の敵国(日本)に対しては例外とする。
2)国連憲章第17章、107条――敵国(日本)に対してとった行動の効力。第2次大戦の戦勝国が敗戦国日本から取ったものや義務付けたものを無効にしたり、排除したりしない。
3.日米安保の日本の主権否定部分
1)第1条――日米の安全保障行動は国連憲章に違反せぬこと。(第53、107条)
2)第5条――日本の領域内で日米いずれか一方に対する武力攻撃が自国の平和と安全を危うくする時は自国の憲法上の規定に従って対処する。(日本の領域内の米国とは日本の米軍基地)
3)第6条、「基地の供与」――極東の安全(米国の世界軍事戦略)の為日本は米国に陸、海、空軍基地とその使用の自由を与える。
4)「地位協定」――(日米安保条約第6条に基く)日本の領域内での米軍の軍事行動の自由の保障義務。米軍基地内の治外法権(第一次裁判権、無免許運転、対日本人基本的人権侵害等)、対日行政優先権(米軍人、軍属は順番無視の即刻行政サ−ビス、所得税、譲渡所得税、道路料金、油税等一切支払い義務なし)、基地費用の日本負担(年4兆円の思いやり予算を含む)、一方通行の日米合同委員会(対米義務履行機関で日本の主権主張機関ではない)。
日本の現状についての正しい認識
以上の「日本の根幹」が示す「事実」から正しい日本の認識は下記の様になる。
「日本の憲法はMADE IN USAであり、最重要部分の天皇(第1条)と安全(第9条)はアメリカとソ連の政治的妥協の産物であり、日本の主権と国益は配慮されていない」
「天皇を日本民族から切り離して国家の象徴にし、国家に万一の事が有れば天皇と共に日本民族も消滅する可能性を憲法に包含させる米ソの本意」
「憲法第9条により、日本の国外軍事出動を厳禁し、自国の防衛を不可能にすることにより米軍依存以外の選択肢を無くし、自衛隊の海外活動は総て米軍の指揮下(新ガイドライン)に置く事により日本を米軍の軍事支配下に置く」
「日本が自国防衛の為に軍事行動を執る場合は相手国が何処であれ国連安保理の許可(常任理事国全員賛成)が要るが他国(敵)が日本を攻撃する場合は自由(許可無し)」
例えば、国連加盟国で第2次大戦の戦勝国である北朝鮮が日本に軍事行動を起こした時、日本の米軍基地が攻撃される時のみ米軍は安保理の全会一致の賛成のもとに対抗措置がとれるが、もし日本の米軍基地は安全で日本の領土のみが危険にさらされる場合は米軍は日本の安全の為に出動する義務はない。
また北朝鮮は(米軍基地を避け)日本のみを攻撃対象とするなら対日軍事行動に国連安保理の許可はいらない。自由勝手に攻撃出来る。新潟沖に北朝鮮のミサイルが落ちても、北海道沖で根室の漁船がロシアに銃撃され財産(漁船)が奪われても日米安保が発動されないのは、いずれも在日米軍に危機は無いから。
さらに、戦勝国は日本から取ったものを返す必要はない。ソ連は北方領土の対日返還義務は全く無いし、旧満州、中国、台湾に今なお存在する日本の民間、国家、皇室財産に対して日本は請求権が無い。国連に加盟しているためである。
日本の国土には米軍の軍事基地(51箇所)があり、米国に基地の使用と軍事行動の自由を保障している。基地は治外法権で日本の主権が及ばず、日本国土は事実上米軍の軍事占領下。憲法の最高法規(第98条、基本的人権――いかなる法も条約もこれに反するものは無効)が米軍の対日権利で侵害されても対抗出来ないということは、米国の権利は日本国の最高法規より上位にあること、即ち「日本は米国に対して主権が無い」ことを意味する。
日米安保第6条に基く地位協定で規定されている日米合同会議は米国の対日権利保証と日本の対米義務の履行機関と規定されている。日本が米国に安全保障問題で主権を主張する機会は全く与えられない。沖縄の人権問題を米国にクレイムする場は何処にも無い。
これが米国の属国でなくして何か
以上の客観事実は、日本が憲法、国連憲章、日米安保とその地位協定で米国に完全に支配されていることを証明している。日本は米国の属国である。
憲法、国連、日米安保に何の疑いも持たず、これらを日本の平和と安全の要だなどと信じている以上日本が主権国家になる日は来ないだろう。
日本の常識は戦勝国と日本の特権階級の恰好の「飯の種」であることを知るべきである。
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