第556号(2009年11月10日号)

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静かだが、怖い一週間

10月の失業率はついに10%の大台を超え10.2%となった。就業可能者の10人の内1人が職を失ったことになる。就職活動を断念した者や日本で言う日雇いパートを加えると失業率は実に17.5%になる。1983年以来26年ぶりの高失業率である。
確かに第三四半期のGDPは年率3.5%上昇したが 、それはオバマ政権の787 billion(78兆円)の減税を含む景気刺激策に負うところが大きかった。
一向に止まらない失業率上昇を考慮してオバマ政権は失業者救済措置の延長と11月末で期限切れになる新規住宅購入者向けの税減免(1件$8,000.00 )を20ヶ月延長することを決めた。こうした一時的なてこ入れ効果は限定的なのでオバマ政権は長期的かつ即効力のある景気刺激と雇用増大政策を準備している。
それは政府出資のインフラ銀行の創設である。これは民需拡大、雇用増大に最も即効性かつ持続性のある道路、河川、橋梁、ビルの省エネ化、大規模不動産開発等大型事業に融資を行おうというものである。我が民主党に言わせれば「コンクリート型公共投資」である。
インフラ銀行が立法化され実効になるのは2010年になるので今期(第四四半期)の企業業績に貢献することはない。問題は、果たして従来の$878 billionに若干の上乗せの刺激策と住宅等一部支援策延長で今期を乗り切れるかである。
今週米小売業の経常損益が発表になるがWall-Martのようなディスカウント店が若干の利益で高級志向のMacy’sなどの利益は大きく落ち込むだろう。政府援助とリストラ効果でこの利益。さらに今年のクリスマス、年末商戦は既に下火と予想されているので、いよいよ今期の経常は最悪になるかも知れない。
一方財政面では既に赤字が$1.7 trillion (約170兆円)に膨れあがってきたので景気刺激のための財政出動にも限界がある。今週は本年最大$81 billion (約8兆円)の米国債入札(手形でいう書換)がある。10月までの入札に波乱がなく10年物国債の金利も3.5%程度で落ち着いていたのはFRBが300 billion(約30兆円)の予算で国債を買い上げていたからである。ところがFRBは10月末で予算を使い果たしてしまったので11月からの国債買い上げはない。FRBの買い注文無しで無事に入札が乗り切れるだろうか。すでに今週10年物国債の金利は若干上昇気味である。
金利上昇がドル買いに繋がるか、それともドル不信に繋がり、ドル、株下落になるか。
それともDebts(国債)市場からリスク市場移行で株が上がるのか。アメリカの小売業業績や一部のM&Aの情報しかない比較的静かな市場の地下から灼熱のマグマが迫って来るような気がする。何故か今週月曜のDaniel Tarullo総裁を皮切りに他の5人のFEDの地方総裁達が各地で講演をする。マグマの火消しでもしようというのか。
いずれにしても現地時間9日(日本時間10日)3年債、現地時間10日10年債、現地時間12日30年債、総額80兆円の米国債入札は最大の注目点である。
今期の米企業業績は消費次第。失業率が10.2%にジャンプしたことで消費者心理は更に悪化するので今期大幅な消費の伸びは期待できない。企業は若干の注文増にはパート労働者増で対処、売上の伸びが確実になるまで正規社員採用に踏みきらない。したがって失業率は更に上昇することは確実である。来年企業業績が、景気刺激策やリストラでなく本業で伸びたとしても雇用の増大は数ヶ月遅れるだろう。
私の(株について)アドバイス、「11月後半に買い場が来る」は依然として顕在である。
しかし、ドルの短期予想には異変が起きそうである!?
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