オバマ政権不況対策の正しさ
2007年12月から始まった世界不況はアメリカのサブプライム・ローン(信用度の低い貸付)の焦げ付きが発端でCredit Crunch(信用喪失)が世界中に伝播し金融システム危機に陥り、その影響が実体経済に波及したのであった。
オバマ政権が発足早々(二月議会承認)$787 billion (約70兆円)の緊急経済刺激予算を打ち出したのに即応してFRBはゼロ金利(0.25-0.00%)による量的金融緩和(Easy
money )を実施、その過程で危機に瀕した投資銀行を大手商業銀行に統合することによって金融システムの安定的統一に成功した。
実体経済に設備投資意欲も需要もない状況下でFRBはEasy moneyを潤沢に市場に投入し続けながら株式、債券市場とゴールド、原油など商品市場の活性化をはかった。NYダウ62%アップ、ゴールド1,140ドル突破、原油80ドル超えなど、需給(実体経済)に無関係なバブル相場に市場を誘導し、その結果で膨張した金融資産に依る金融機関の体質改善に成功した。株価高騰によって貯蓄偏重(消費減退)に陥っている消費者心理の改善を期待したが、過去の例に反して高騰を続ける株価はむしろ消費者の警戒感を招き、更に失業率の10%超えで消費者心理は逆に冷え込む結果になった。
実体産業はリストラと政府の低燃費車や新規購入住宅の税減免措置等で第三四半期までは好業績であったが、今後はリストラ、政府援助に限界があることから今後消費が急速に伸びない限り第四四半期を乗り切ることは難しい。
オバマ政権は第四四半期の不安が市場に起こりつつある中で、インフラ銀行構想など雇用増大と内需拡大に即効性が高い「コンクリート型公共投資」を打ち出している。
金融システムという、いわば人間の体で言うと循環器系を金融バブルで改善し、次はハードの公共投資で足腰を強化しようというわけである。
オバマ経済戦略が効を奏するかどうかは消費者心理を左右する雇用のいかんに掛かっている。雇用が増大すれば消費者心理が改善され貯蓄から消費と投資に家計資金が移動する。
株価の笛で踊らなかった消費者は必ず雇用で踊る。
企業の生産性は9%を超える異常な高さになっている。これをみても企業はもはや社員採用をせざるを得ないところへきている。米家計の貯蓄性向7%という異常さは、消費者はもうこれ以上節約が出来ないことを示している。
天下の名演技者、オバマ大統領が何をきっかけに消費に火をつけるか、これに2010年の世界経済が掛かっている。Yes, we can !(やれば出来る!) なのだろう。
民主党政権
それに引き換えわが国の民主党内閣の経済センスの無さには驚く。アメリカ一辺倒を嫌い普天間見直しを唱えたり、インド洋石油供給廃止は評価できるが、不況対策に対する基本的指針は完全に間違っている。資本主義経済政策の大原則は、オバマ経済戦略のように、「不況時は無駄(限りなき赤字国債発行)、好況時には節約(財政健全化)」である。財政健全化はバブル時の言葉であって不況時は限りなき赤字国債による超大財政出動である。このままでは日本経済はインフレより怖いデフレ・スパイラルに陥る恐れがある。
果たして来年2010年の日本経済はどうなるのだろうか。
*今後の株式、為替戦略の詳細は私の最新「小冊子」(Vol. 6)をご参考ください。
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