第666号(2011年8月1日号)

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円高は日本の誇り(Be proud of high rise of Yen)

米国債の上限引き上げ問題は8月2日の期限前に何とか上院、下院の合意の運びとなった。私は先週から一貫して「米国債のデフォルトは起きない。従って日米株価は8月1日から急騰するから今こそ絶好の買い時」と「ここ一番!」の読者や「小冊子」の読者にアドバイスをしてきた。今ボードを見るとニッケイ平均は1万円を回復し、150円を越す勢いである。ドル・円も「米両院の同意が出来ると若干円安になる」と言った通り78円に接近している。


前回の本誌で述べた通り、戦後の日本はアメリカの支配下で政治、経済共にアメリカの従属し、アメリカは日本最大の債権国であった。ところが今や日本はアメリカ最大の債権国である。戦後の1ドル360円は今76円、474%の円の上昇率であり、ドルの下落率である。通貨の交換率は通貨の購買力だから通貨の上昇率は購買力の上昇であり通貨の「強さ」でもある。資本主義時代は「資本(カネ)がモノを言う時代」だから戦後から円の発言力はドルに勝り続けてきたのである。企業の目的は純利益高であって総売上高ではない。1995年、円は当時としては史上初の対ドル79.75円を付け「日本経済は終わりだ」などと評論家もマスコミも大騒ぎをしていた時、私は「今こそ絶好の買い時」とアドバイスを発した。円高効果で翌年(1996年)日本の輸出産業は未曾有の利益を計上することを知っていたからである。私の予測通り、輸出企業は輸出量を抑え国内販売を強化したので超円高は超コスト・ダウンとなり日本の輸出産業の1996年3月決算は前年赤字は黒字転換、黒字は倍増という好決算であった。何故戦後から一貫して円高が進行しているのだろうか。何故日本の国債残がGDP比200%になんなんとするのに円高なのだろうか。何故日本経済がいまだにデフレから脱却出来ないのに円高なのであろうか。本誌で何度も述べたが、国家の政策で日本の国債のほぼ100%は国民(銀行、企業、国民等国内)が保有している事実は大きな理由の一つである。つまり国際的に日本は世界最大の債権国であってアメリカのような債務国ではないということである。何より大きい理由は歴史的理由である。つまり政府と日銀が銀行、企業、国民に市場よりはるかに低い金利でほぼ100%の国債を持たせてきた国家基本政策にある。このいわば国家の国民に対する圧力(戦略)のことをFinancial Repression(日本語の正式な訳は分からない)と言う。要するに政府・日銀が国債を国民に持たせる度に市場金利と押し付け国債の金利差分だけ国債を返済したことになるのである。


この返済金資産は戦後から今日まで一切国の貸借対照表には現れない会計基準を採っている。だから国民は、日本は「借金で首が回らない」と信じこまされ続けているのである。これは明治以来の金融富国政策であり、国民から税金を取り続けるために何時までも続けなくてはならない日本の専売特許的秘策である。


市場は日本の財務省の貸借対照表より「事実」を見て動く。だから毎日、毎月、毎年円高になるのは「市場の常識」なのである。2011年も日本の輸出企業は輸出量を減らし国内にシフトしている最中に3/11となり、ありがたくも政府の30兆円規模の公共投資(復興投資)で内需が拡大されるので企業在庫ゼロのフル操業になろうとしている。そこへありがたくも超円高で超コスト・ダウン。それなのに日本の常識「円高は日本経済に悪」の声が聞こえる。
どうも何とかにつける薬はなさそうである。


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