第680号(2011年10月17日号)

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世界経済短期予測
総ては中国次第

現在発売中の「小冊子」(Vol.29)で中国経済に付いて詳しく述べているが、今の中国の成長モデルは1970年代からの日本の高度成長過程とは「似ても似つかぬ」と述べ、その理由をいくつも挙げた。中国国民の所得はここ10年間の経済成長率に比して下がり続けている。かつての日本の成長モデルの正反対である。
中国の経済成長を押し上げているのは単に二つの要因だけ:
第一は中国の大企業の約半分を占める外資系企業の輸出高と、第二は中央ならびに地方政府が所有する土地の売却収入である。特に地方政府の共産党幹部は自らの出世のため、監督下の土地売却収益が国家の経済成長率を上回ることをノルマにしている。
土地を安い価格で買い取った開発業者は国営銀行から融資を受けビルや住宅を建てまくる。売れなければ会社は国営企業に吸収され、不良債権は国営企業が引き受け、さらに国営銀行がBail out(救済)する仕組みになっている。
今、中国は低所得者向け住宅(マンション)を年120万戸建てているが、この数字は現在のアメリカの年間新築住宅数の2倍に当たる。今後5年間継続するが、一戸に3人が住めば毎年イギリス一カ国が中国に出来るのと同じ計算になる。工事は120万戸一斉に始めるので、その様は壮観である。
真の目的は弱者救済もさることながら、雇用増大と関連産業の成長拡大である。
正に万里の長城やピラミッド建設と同じ目的で、市場の原理を無視した共産党独裁体制でなくては出来ない仕法である。
2007年末からの不況の煽りで中国の民間企業の約40%が倒産したがほとんど国営企業に吸収された。国営企業はどんなに赤字を出しても国営銀行がBail outするので、経営合理化や生産性向上のインセンティブは皆無。
モノ造り中国と言うが中国の国際競争力は「安い労働コスト」以外の何物でもない。インドをはじめ周辺アジアの製品コストが中国より安くなってきたので欧米も日本企業も中国から他国へシフトし始めている。
中国はすでに外需低迷を読んで内需拡大に重点を置き始めたが、内需を不動産バブルで牽引している以上リスクは大きい。


アメリカの内需は限界だからオバマ大統領は5年間で輸出倍増する計画に賭けている。
9月の対中輸出は2.9%伸びて$8.41billionだったが、今後中国の不動産バブルが崩壊(ハード・ランディング)すると大打撃を受けるのはアメリカである。
対中貿易赤字は7.4%上昇して史上最高になったが、実は輸出も輸入も増加している。ただ輸入が依然として大きく伸びている。
市場原理では中国経済は何時ハードランディングしてもおかしくない。2008年の北京オリンピック後、景気低迷を国営銀行総動員で防ごうとしたが、市場を押さえることは出来ず中国の株式市場は暴落したことを考えると、日本を除く世界経済最大のリスクは中国経済ということになる。
日本は大震災復興で輸出を減らし内需志向にならざるを得ないので先進国で一番中国リスクが少ない国である。景気低迷期の投資は消去法だから、買われるのは日本しかない。そのうち結果が出ることになる。


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