NATO(北大西洋条約機構)シカゴ会議閉幕
5月20日と21日に米シカゴでNATO首脳会議が開かれアフガニスタン安定化についてISAF(アフガン国際治安支援部隊)の出口戦略を確認した。
2013年いっぱいでアフガンの治安任務を現行政権(カルザイ大統領)に移管して米軍をはじめ参加国(約50カ国)の軍隊は2014年までに撤退すると言うもの。アメリカは参加国に2014年まで駐留することを求めたが、フランス、オーストラリアは2013年の完全撤退を通告、他の諸国もフランスに追従し2014年前に撤退することになりそうである。
したたかなオランド フランス大統領
ISAF撤退後の2015年から現政権が治安を維持するには41億ドルが必要とされ、この捻出について協議したがアメリカや日本を除いて申込があったのはドイツ、イタリア、カナダ、英国、トルコ、パキスタンだけで分担金額は目標額の五分の一の8.1億ドルであった。欧州ではドイツがアフガン支援には最も積極的でフランスは最も消極的である。フランス軍はドイツの反対を押し切って2013年に完全撤退を決め、他国の早期撤退に拍車をかけている。
フランスは昨年NATOの名のもとにリビアの反ガダフィ勢力を短期、集中的軍事支援し新政権樹立を助け事実上リビアの原油利権を手中に収めたので今や役目の終わったNATOを脱退し次なる世界戦略に移ろうとしている。中南米、アフリカ、アジア、太平洋にエネルギー、鉱物資源、食糧資源の利権獲得活動を展開している中国と、これを阻止しようとするアメリカの同盟国連合との戦いの漁夫の利を得ることが次なるフランスの戦略である。近く行われるフランスのNATO脱退宣言は欧州の債務危機に加えて欧州の新たな政治危機に発展するだろう。
アフガン参戦の目的は正義ではない
2001年9月11日NYとワシントンD.C.で起きた同時多発テロ(9/11)の直後(10月)ブッシュ政権はアルカイダの首領ビン・ラーディンを匿ったとしてアフガンのタリバン・イスラム政権を軍事攻撃し、アメリカのパイプライン会社を代表してタリバン政権とパキスタンのカラチ港までのパイプライン敷設権の交渉をしていたカルザイ氏を大統領に仕立てて今日のアフガン政権を樹立した。NATO加盟国や非加盟国がISAFへ参加し今日まで資金と人命を犠牲にしたのはテロとの戦いと言う「正義」は表向きで本当の「目的」は石油の宝庫カスピ海周辺からカラチ港(パキスタン)までのパイプラインの利権確保である。1979年ソ連(当時)のアフガン侵略の目的も同じであった。今回のシカゴ会議で、オバマ大統領が「アフガン安定化は完璧ではないが、、」と言ったようにISAFはアフガンのタリバン勢力平定に成功出来ないから利権の根源となるパイプライン敷設は難しい。資金と人命の犠牲が無に帰したことが明らかになったのを見てフランスのオランド大統領は2013年にフランス軍の早期撤退することを選挙公約に掲げたのである。今後参加国は続々と早期撤退に踏み切り、参加国に今後のアフガン治安資金協力を期待するのは難しいだろう。
もしカラチまでのパイプライン敷設が成功すれば原油生産量のシェアが落ちるのはサウジアラビアをはじめアラブ産油国で、OPEC(石油輸出国機構)の国際経済への発言力と国際原油価格に対する影響力が低下することは明らかである。だからアルカイダやタリバン勢力の資金源はサウジ等中東産油国なのである。
7月に東京で、日本が議長国になって「アフガン支援に関する国際会議」を開催して「41億ドルのアフガン支援金集めに各国の協力を求める」などと玄葉外務大臣はNATOのアフガン部会で述べているが、「ドロボーに追い銭」を集める責任を負わされたようなもの。
フランス大統領オランド氏の爪の垢でも煎じて、もう少し日本の国益の為になることは出来ないものだろうか。
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