第752号(2012年08月20日号)

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(夏休みが終わったら中東問題を総括するとお約束したので、イスラエルのイラン空爆の有無について真相を述べます)

イスラエルのイラン空爆は無い!

私は「2013年3月、イスラエルはイラン空爆に踏み切る」と述べてきたが取り消さなくてはならなくなった。それは「シリアでの実験(リハーサル)が成功することになった」からである。シリアでの実験とはアフガンやイラクで成功した直接的軍事侵攻ではなく、チュニジアやエジプトで成功した「内戦」、「民主革命」等と呼ばれるアメリカの「間接侵略」のことである。シリアはイランの軍事、経済支援下にあり、兵器はロシア(一部は中国)から支給されている、言わばイランのフロント(前線)である。
丁度2003年3月ブッシュ前大統領がイラクに直接軍事侵攻するに当たって国際世論を味方につけるために捏造情報を世界にばら撒きサダム・フセイン前イラク大統領を「悪玉」に見せつけたように、アメリカの言いなりになるカタール王室メディアのアルジャジーラ(地元テレビ)とCNNのプロパガンダでシリアのアサド大統領は「殺人鬼」にされている。だから今やアメリカはかつてのイラク同様何時でもシリアに直接軍事行動を執ることが出来る状況にある。1981年イスラエルは8機の戦闘機でイラクの核関連と見られる施設を空爆し、さらに2007年イスラエルはシリアの原子炉予定地を空爆したが、いずれも報復を受けることなく、かつ国際社会からは正当な自衛行動として認められた経緯がある。では今イスラエルは国際世論の支持の下でイラン空爆をすることが出来るだろうか。答えはNo(ノー)である。現時点でのイラン空爆はかつてのイラクやシリア攻撃のように簡単ではない。イスラエルからイランまでの距離は往復3,600キロもあり、イランの核施設は4‐5か所に分散され、かつ施設は25‐50メートルの地下で数メートル厚のコンクリート壁で防御されている。
8機どころか給油機を伴う100機以上の大編隊になり、アメリカが持つバンカー・バスター等の高性能地中貫通爆弾装備が必要。専門家の分析ではイランのロシア製高性能対空ミサイルで100機中70機は打ち落とされると言うからイスラエルのイラン空爆の犠牲は大きくかつ成功率は極めて低い。しかも仮にイランの核施設破壊に成功すればウランやプルトニューム放射能が中東地域一帯だけでなくアジアにまで飛散して、日本にも被害が及ぶ可能性があると言う。
中東のアメリカの同盟国に死の灰を降らすようなことをアメリカがイスラエルに許すことはない。さらにイスラエルのイラン攻撃が始まればレバノンに陣取っているイランの先兵隊ヒズボラのロシア製カチューシャ・ロケット4万がイスラエルの首都テルアビに向けて火を吹く。実はイスラエルはイランの核開発を阻止する為に核施設の空爆などする必要など全く無いのである。
2011年以来イスラエルはイランの核開発で重要な役割をしている核科学者達を次々に暗殺しているし、サイバー攻撃で3,000の遠心分離機の大半の機能を不能にしている。その結果イランの核開発は数年遅れている。(どうせ数年の内にイランにはアメリカの傀儡政権が誕生するから全く問題は無い)
イスラエルのイラン空爆などという全くあり得ないことを、まるで今にも起きるよう世界を信じ込ませる為にマスコミや人道主義団体が朝晩働いているのである。
核保有の事で一言いうなら、一旦核を持てば何処からも攻撃を受けることは無く、国家の主権を守ることが出来るという事実を日本人は知るべきである。
北朝鮮が2005年に核兵器の保有宣言をしたと同時にアメリカは北朝鮮に対して一切軍事行動を執らないと宣言し、その結果日本はアメリカの核の傘から放り出されたため、今や北朝鮮、中国、韓国からの主権侵害に何一つ対応出来ない。いとも簡単に核を持つことが出来る日本が核を持とうとしないのは自国の安全に責任を持とうとしないからではないのか。それともアメリカの狙い通りの「広島・長崎効果」なのだろうか。
さて話を元に戻すが、イランのハメネイ最高指導者やアフメディネジャド大統領は「イスラエルを世界地図から消し去る」と公言し、IAEA(国際原子力機構)はイランの核疑惑を証明しているのだから、国際世論がイスラエルのイラン空爆を正当化するのは当然。また歴史が証明するアメリカの「イランの石油をアメリカの資産にする」ための戦略からすれば、先ずはイランの前線シリアに侵攻してからイランを叩くのが常道。こうした政治理論の下で「イスラエルのイラン空爆が秒読み段階にある」と言われれば誰でも「イスラエルのイラン攻撃あり」と信じるのは当然である。
毎年イスラエルとアメリカ支援でチェコのプラハとイスラエルでSecurity Council「平和会議」が開かれ、世界中に分散している民主活動家の指導者が一堂に会す。2006年以来私は招待され、出来る限り参加してきた。
そんな訳でチュニジア動乱の時もエジプトのムバラク独裁政権崩壊時も私の顔見知りの活動家達の映像をCNNで何度か見ることが出来た。
今シリアで政府軍と戦っている「自由シリア軍」(FSA)はトルコ、リビア、レバノンとヨルダン北部でアメリカのCIA(中央情報局)とイスラエルのモサド(秘密軍事組織)によって訓練され、武器供給と資金援助を受けている、事実上アメリカとイスラエルの派遣軍である。
イスラエルのネタニヤフ首相やバラク国防相は、「イスラエルはイラン空爆をもうこれ以上待てない」と言い続け、オバマ大統領はイスラエルのイラン空爆を自制させる為対イラン経済制裁強化で応えているが、あり得ないイスラエルのイラン空爆を自制させる為とされている対イラン経済制裁強化の真の目的は、イラン経済を悪化させイラン国民の不満を煽り、反政府勢力の拡大を図るためである。イスラエルはイラン空爆に対するイランのミサイル反撃を想定してガスマスク配布や「空襲警報メール」の実験などをしながら、如何にもイラン空爆が目前に迫っているように演出している。一方イランのイスラエルに対する強硬姿勢は激化の一途でイスラエル抹殺を訴え続け、経済制裁にもかかわらず核開発を止めるつもりはないと断言している。しかしながらイランのイスラエル敵視の国際的かつ経済的理由は特に無く、本当の理由は国内事情にある。
すなわち最高指導者ハメネイ師とアフマディネジャド大統領の現政権は2009年の大統領選勝利で成立した政権で、当時の大統領候補であったムサビ氏やハタミ前大統領などの穏健派は今なお健全で、アメリカに亡命中の次期大統領候補等のエリート勢力と手を組み、アメリカの直接、間接援助を受けながら徐々に勢力を拡大している。従って、イスラエルの、今にも実行するかに見せかけたイラン空爆の連呼はイランの現政権にとっては穏健派を抑え、国民世論統一の為に最も望ましいのである。またイスラエルのイラン軍事攻撃に対するイランの反撃があればカタールやサウジ・アラビア、クエート等々のアメリカの同盟国に及ぶという想定で、アラブ諸国への軍需は昨年から64%も上昇、さらに2013年の予約注文は100%を優に超える勢い。
おかげでアメリカの基幹産業である軍産複合体の高成長が景気回復に一役買うことになるからアメリカにとってこの上もない好都合。一方ロシアも中国もシリア、イラン向け軍需が急増しており、言わば「漁夫の利」を得ている。
イスラエルの見せかけのイラン空爆、シリア内戦の長期化は、当事国の国民を除けば「総ての国の利益」になっている。
一方「総ての国の利益にならないホルムズ海峡封鎖」などあり得ないのである。
当然のことだが、「イランの原油をアメリカの資産にするため」、シリアの現政権崩壊後は「イランで内戦が起きる」!
イランの亡命エリートが次期イラン大統領になる日は遠くない!


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