リーマン・ブラザーズ破たんから5年目に当たって考えること
リーマンが破たんしたのは2008年9月15日。以後「リーマン・ショック」は信用バブル崩壊の代名詞になった。リーマン・ショック直後の10月アメリカは金融安定法により約70兆円のTARP(Troubled Asset Relief Program)という不良債権買取機関を設立、大手投資銀行とBig 3(クライスラー、GM、フォード)を救済した。続いて同年11月QE1(第一次量的金融緩和)として(1ドル=100円換算で)約172兆5,000億円を、2010年11月QE2として90兆円(減税を含む)、さらに2012年9月QE3として長期国債買取分として月額約4兆5,000億円、MBS(住宅ローン担保証券)買取分として約4兆円の追加緩和を実施、現在継続中であるが、今週9月17-18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で緩和縮小規模と時期が検討されることになっている。
では5年間のFRBの緩和の結果はどうなったのだろうか。
FRBやECB(欧州中央銀行)等中央銀行の資産(国債等)倍増した、NY株価が2007年7月のバブル最盛期の最高値14,200ドルより1,000ドル以上上昇した、2008年からの金融緩和で誘導された国際資金と4兆元規模の景気対策で二けた成長をした中国経済は生産過剰に陥ると同時に本年5月から急速な資金流出に見舞われ成長が鈍化してきた、同様にインドなどの経済基盤が弱い新興国がFRBの緩和縮小の影響で資金流出による通貨下落、インフレ化で危機に晒されようとしている、日本では、日銀が異次元金融緩和の名のもとに4月4日先進国で最も遅れて量的にFRBの3倍の規模の緩和に踏み切った結果円安が進行、東日本大震災復興とオリンピック招致決定による公共投資と投資増額見込みで経済成長率が先進国最大の3.8%と景気回復に向かっている。
自由主義経済は国家の政治、経済政策で一定の期間は市場をコントロール出来るがその効果が5年以上持続することは稀で必ず「見えざる手」によって調整される。
川の流れを人為的に速めても必ず元の流れに戻るのが自由市場の法則である。
金融緩和で市場に誘導された資金は資金需要のない実体経済(GDP)に影響を与えることなく金融市場に流入し、丁度中央銀行の資産を倍増させたように金融資産を倍増させた。アメリカでは1%の特権階級に対して99%の市民たちがウォール・ストリートの不当、不正に対してデモを繰り返したように金融資産倍増で資産を倍増したのは投資銀行、大手ファンド、超富裕層(100億円以上の金持)の1%、俗にいう「大物」だけ。彼らは8月上旬S&P500(アメリカの優良企業500社の市場)が最高値を付けた時点で100%以上の含み益の利益確定(現金化)を終えている。
私が投資家の皆様に執拗に「売り」をお勧めしたのも8月上旬であった。
その後NYは上げたが、それは大物が市場を去った後に残された一般投資家が大物が見向きもしなかった中小品薄株を買わされてNYダウ平均を上げているに過ぎない。それが証拠に8月中旬NY株価は上がっても大物が売り逃げているから出来高は激減している。今後NYに何が起きるのか、またニッケイはどうなるのか。FRBが超大緩和を続けていた間日銀は「日銀券ルール」を守って事実上緩和をせず通貨安競争にも参加しなかったため円の独歩高を招いていた。
しかし日銀はFRBが緩和縮小着手を考慮しなくてはならなくなった時(4月)FRB緩和縮小の補填役としての異次元緩和に踏み切った。株価を押し上げる唯一の要因、金融緩和を止める国と始めた国の絡み合い。これが今後2年間の日米経済と世界の株価、為替、そして金相場(商品相場)の動向を決める。
本誌のサポーターの皆様に欧州からお送りする「増田俊男の特別レポート」、題して「NY暴落とその後の市場を総括する」、「主導権なき日本経済の大繁栄」をご参照ください。
発送は予定(9月20日)を変更しFOMCの結果(日本時間19日)を見た上で書き終えるので月末頃からになります。
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