第859(2013年10月1日号)

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頓珍漢(とんちんかん)の円安政策

日本経済構造は2005年から180度変わった。(貿易収支と所得収支の推移参照)



財務省の国際収支状況で明らかなように2005年を境に日本経済は恒常的貿易黒字国から赤字国へ変わっている。一方海外からの所得は2005年から急速に伸びて月額1兆円を超す勢いである。日本経済は外需依存の貿易大国から海外所得大国に変身したのである。
日本の外需依存型の製造業は2000年あたりから円高を梃に生産拠点をアジアや欧米の消費地移管が続き、今後も続く。数日前に発送開始した「増田俊男の特別レポート」でカルロス・ゴーン日産自動車の言葉を紹介したが、「日本の自動車産業にとって円安は決して好ましいものではない」と言っている。
ゴーン氏は「円安は輸出産業にプラス」という時代錯誤の常識を嘲笑しているのである。日本の製造業は外需に対しては生産拠点の海外移転でカバーし国内生産は国内需要に合わせる方向に進んでいる。
日本からの海外直接投資には円高が有利であり、国内生産の輸入原材料のコストを下げる円高が有利である。
円安は輸出大国には有利であるが海外所得大国には不利である。

9月24日財務省の発表によれば2013年上半期(1−6月)貿易収支(輸出額‐輸入額)は4兆8,438億円で2012年下半期の4兆242億円を上回る過去最大の赤字額であった。貿易収支の赤字は増え続けているのに経常収支が黒字を保っていることは日本経済が完全に海外所得大国になったことを証明している。
異次元金融緩和という事実上円安政策「アベノミクス第一の矢」は100%的外れである。矢の的は日本経済ではなくFRBであり、FRBの金融緩和縮小の補填でしかない。
円安でニッケイが上がり、円安を企業が歓迎する姿は滑稽としか言いようがない。これが「ぬか喜び」であることが分かるまでがアベノミクスの寿命!




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