21世紀の新たな冷戦と日本
戦後の米ソ冷戦が終わった1991年ソ連崩壊後、アジアの政治秩序は世界の警察を自認していたアメリカが仕切り、一方経済は世界の基軸通貨ドル発行の自由裁量権を持つアメリカが主導した。
20世紀は正にパックス・アメリカーナ(Pax-Americana)の時代であった。
2001年ブッシュ政権はセプテンバー・イレブン(9月11日同時多発テロ)を期にWar On Terror(テロとの戦争)に多国籍軍を先導しアメリカの軍事主導力を世界に誇示した。アメリカは軍事戦略の矛先を中東とアジアに置く、いわゆる「二正面作戦」を執った。アメリカは中東における7年以上のテロとの戦いでアフガニスタンのイスラム・タリバン政権とイラクのサダム・フセイン政権を打破し、選挙による議会制民主体制を確立したが、「仏作って魂入れず」で、内紛やテロが絶えず、テロを一掃することが出来ず、中東に混乱を残したままオバマ政権になると中東からの米軍全面撤退のやむなきになった。アメリカは中東とアジアに睨みを利かす二正面作戦を断念し、アジアを重視する「一正面作戦」に専念することになった。
アジアでは中国の軍事力が年々増強され、中国の沿岸には横須賀を母港とする空母ジョージ・ワシントン号を主艦とする第七艦隊も台湾海峡はおろか中国沿岸に接近出来ないほどの多数の中距離ミサイルが配備され、さらにアメリカが誇る監視衛星をいつでも爆破出来る準備が出来ている。さらに中国は尖閣諸島を実効支配し沖縄の米軍を牽制しようとしている。アメリカの国防省は日本やオーストラリア、インド、フィリピン等々アジアの同盟国や友好国と共にエアー・シー・バトル(空・海戦)という中国囲い込み作戦で対抗しようとしたが、オバマ大統領は中国との対立激化を恐れ中止した。
一方中国とロシアはアメリカの生命線であるドル基軸制を廃止に追い込むため日本を含む30か国以上と通貨交換(スワップ)契約を締結、相互通商取引からドル排除を進めている。
5月22日北京でロシアのプーチン大統領と習近平中国主席と首脳会談が行われ、中国はロシアから約41兆円と言う膨大な原油供給を受ける契約を結んだ。
今まで欧州に供給してきたロシアの天然ガスを中国に切り替えることは中国のエネルギー安定に期すると同時に、ロシアは何時でも欧州向けの天然ガスパイプラインを止めることが出来るようになった。
ロシアは本年ウクライナのクリミア半島を併合、親ロ都市をウクライナから独立させている。欧米は対ロ制裁を口にしている間にロシアは着々と旧ソ連領に勢力を拡大している。プーチンの中国訪問の成果はガスの供給先の確保ではない。中国とロシアの対米政治同盟化と対米エネルギー戦争の宣戦布告である。
日本はすでにアメリカの核と日米安保は頼りにならなくなったことを認識している。ロシアはドル基軸制廃止では中国と歩調を合わせるが中国の軍事力の急拡大に懸念を持つ。日米安保堅持の日本に接近することでロシアは中国とアメリカを牽制しようとしている。今こそ日本に「漁夫の利」が狙える時が来たのである。
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