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平成30年度一覧
1275号(2018年9月10日号)
日銀の金融政策宿命的失敗

「金利には名目金利と実質金利、さらにインフレ率との関係を知らねば毎日の経済現象を理解することが出来ない」。これは経済学者の言うことです。
さらに経済学者は「実質的金利とは名目金利から物価上昇率を差し引いた率」だと教えてくれます。1億円のマンションを銀行から年利3%で借りて購入、1年後に売って返済する場合、仮に1年後の物価(マンション)が3%上がったら、1億300万円でマンションを売って同額の元利合計を返済すれば1年間ただでマンションに住んだことになるので借りない手はないことになり、借りる人が多くなり、マンションはどんどん売れ、マンション価格(物価)が上がり、建設会社の業績も上がり、マンション建設に必要な資材の価格も上がるという相乗効果になり経済は成長します。(アメリカが地で行っている)

日銀の黒田総裁は物価ターゲット(インフレ上昇率)2%を掲げて2013年4月4日異次元金融緩和を発表、2015年までに当時のマネタリーベース135兆円(日銀券残85兆円と民間銀行の日銀当座残50兆円の合計)を2015年3月までに2倍の270兆円にすると発表、過去に例のない対マネタリーベース緩和量なので世界は仰天。当時日経新聞は「黒田日銀、デフレ脱却に戻れぬ賭け」と一面トップを飾りました。3年後の2016年物価がターゲットからほど遠いことから同年9月20日の政策決定会合で、黒田日銀は質的金融緩和と称して、イールドカーブ・コントロール(市場操作で短期国債利回りをマイナス0.1、長期国債利回りを0%に固定する)を導入、さらに物価ターゲット2%になるまでマネタリーベースを年80兆円規模で拡大すると発表しました。
今日の物価上昇率は総合0.9%、コア(生鮮食料品を除く)は0.8%、コアコア(食料品とエネルギーを除く)は0.3%。これは異次元緩和後の2014年から2017年の平均をはるかに下回っているばかりかGDPの寄与もマイナスです。
この大失敗の原因は「通貨の価値(購買力)を下げれば物価が上がる」という経済箱庭主義(鎖国主義)という日銀開設時前(江戸時代)の観念に囚われているからです。
日銀がいくら緩和を続けても、資本は「資本の意志」に従ってマイナスやゼロ金利の日本から長期国債利回り3%の米債券市場に流れ、アメリカ経済の為に使われます。黒田総裁が言う「物価2%上昇を見るまで躊躇なく緩和を続行する」の真意は、「日銀は日本経済と日銀のバランスシートを犠牲にしてどこまでもアメリカ経済の為に尽くす」と言うことに他ならないのです。
日銀が独立制を理由に、アメリカのようなFRBとトランプ財政(大型減税など)とマッチした政策でインフレ率ターゲットをクリア(2.4%)しないのは本店(FRB)から許可が下りないからです。黒田総裁が再選されたのは、なかなか黒田氏のような渋い顔をした適任者は見つからないからです。黒田氏はトランプ同様得難いご仁なのです。
今後の経済予測(為替、株、ゴールド)については「小冊子」Vol.101をご参照下さい。


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