北朝鮮のミサイル発射非難国連安保理決議 「中・ロを加えて安保理が一致して北朝鮮ミサイル発射非難決議をしたことは評価すべきである」というのが日本の世論となった。しかし現実には、「中国は制裁を本旨とする日本案に対して拒否権行使も辞さないと表明した上で日本案を葬り(日本に日本案を断念させ)、“平和に対する脅威”などの厳しい表現を決議文に加えることで自国(中国)・ロシア案を反対なしで採択することに成功した」のが事実である。「中・ロ案は北朝鮮のミサイル発射に対して制裁をしない」が本旨。北朝鮮に対する「厳しい言葉」を決議に盛り込んだのは、日本に対する重要な目的があってのこと。つまり日本の世論に「日本敗北」のイメージを与えないための救済措置である。日本の(事実に反する)世論操作に協力することで、「(実際は負けたのに)勝ったかのように日本の世論を誘導し、日本を(船舶制裁から)更なる経済制裁(送金停止など)に弾みをつけさせるためである。(思惑通り、安倍官房長官は次なる制裁に動き出した) 今回の中・ロの決議の本旨は、逆説的に解釈すれば「制裁反対決議」である。言葉(表現)では非難しても「拘束はしない」(拘束力なし)。従って「北朝鮮に(正当な理由さえあれば)将来のミサイル発射実験を許す決議」である(北朝鮮は中ロ案を承知しており、中国は北朝鮮代表が決議案を拒否し、ミサイル発射実験継続を宣言して安保理の場を退場するのは先刻承知=出来レース!)。決議文(表面上)の言葉とは裏腹に、結果的には北朝鮮のミサイル発射を加速させることになったのが今回の安保理決議騒ぎの結末。全会一致の安保理決議の本旨が「制裁はしない」であるにもかかわらず、日本は既に(決議前)船舶制裁を決め、さらに(決議後)安倍官房長官の指示で改正外為法を適用し送金停止等の制裁措置を加速しようとしている。 決議前後の制裁措置は日本だけだから(アメリカの金融制裁はミサイル発射に対してではなく、偽ドル札など)、これで北朝鮮は将来のミサイル発射に対して、(安保理決議の本旨に反する)「日本の制裁に対抗する」という立派な(正当な)理由を得ることになる。アメリカ、中国、ロシア、韓国が望むのは「日本だけの責任で北朝鮮がミサイル実験を繰り返すこと」である。北朝鮮のミサイル発射実験がいかに6カ国協議国の国益になっているかは、本項で繰り返し述べてきたので省略する。 いよいよ戦争(実行)時代 私は「2006年は動乱の年」と言ってきた。世界の変動は経済から政治要因に移る。最近のイスラエルの異常なほどの(ヒズボラ攻撃を名目にした)レバノン攻勢をブッシュは(暗に)支持している。近視眼的には11月のアメリカの中間選挙対策が秘められている(現在ワシントンで確認中)。現在は、2001年ブッシュ政権が採用したランド・コーポレーションの軍事戦略報告書の通り「20年間の戦争時代」の中間地点である。9/11で演出したテロとの戦争を皮切りに、「自由拡大」の名の下に中東からアジアへ緊張を拡大するアメリカの政治戦略がいよいよ実行段階に移ってきたのである。「改革」の名の下に革命やクーデターで(ウクライナのように)自ら民主主義体制を採用する国がここへきて限界に達したので、アメリカは今後非民主国家を解放するためには政治力(軍事力)を使う。 そのためには国際テロ、地域的内戦、地域的軍事脅威(北朝鮮など)、民族抗争、宗教的扮装、内乱(将来の中国)、等々を促進しアメリカの政治介入の場を創造する段階になった。今までの「アメリカの自由拡大構想」は2006年を迎えて準備段階からいよいよ実行段階に移る。今後20年間のアメリカの戦争戦略の先に輝いているのは、世界の自由市場化であり、「ドル市場拡大」であることは言うまでもない。
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