第378号  (2006年09月08日 国会議員号)

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日本国新総理大臣の資格

一国の首相を目指すからには、まず@「目指す国家像」を明確にし、次にA 理想の国家実現のための「国の形」を示し、さらにB 国の存在理由である「安全保障」のあり方を打ち出す必要がある。3人の候補者の所信で、上記3点を明確にしているのは「安倍晋三」だけである。

安倍氏は「普通の国」を目指している。現行日本国憲法と日米安全保障条約下の日本は普通の国ではない。自国が自国の危機を認識した時、自国の国権の意志で国防ができない国は普通の国ではない。憲法の前文を貫いている非武装中立の思想はまったく非現実的であるばかりか、むしろ国民を主権意識から遠ざけてきた。

安倍氏は第一に、憲法改正を唱えている。しかも憲法前文に国家の目的を明記しようとしている。余談だが、現行憲法前文の要旨は「平和を希求する」である。これこそが現行憲法からの国家目標を喪失させている最たるもの。「平和と戦争はともに、国家目標達成のための手段」であるという政治力学の原理を知らねばならない。手段や「場」である平和をいくら祈っても国家の「目的」は達成されない。戦後60余年のうちに「日本は他国の目的のための手段や場になってきた」のではないか。

安倍氏の「憲法前文と憲法第9条第二項の変更」による「自衛権行使の確立」、さらには「集団的自衛権行使容認」は日本が普通の国になるための基本条件である。隣村に自転車で情報を伝えていた時代の都道府県制度が、世界が同一机上に乗った今、機能しなくなって当然である。安倍氏は情報革命時代に即した「中央官庁再々編成」と「道州制導入」を「新しい国の形」として強調している。

「日本には顔がない」とは、私が今まで外国で、特にアメリカで飽きるほど聞いてきた言葉である。国益の最大要因は「国家の安全」である。アメリカの国家安全保障会議(NSC)は安全を中心とした外交戦略を大統領に助言する機関である。まさに「アメリカの顔」である。安倍氏は日本版NSCを創設し、官邸の助言機関にしたいと考えている。「日本の顔」を作ろうとしているのである。

以上のように、日本のリーダーを目指す安倍氏の姿勢そのものは完璧といっていい。安倍氏が「理想倒れ」にならないためには「霞ヶ関に対する指導力」が決め手になる。小泉首相が官邸主導で族議員と官僚の抵抗を押さえることができたのは、小泉人気をバックにした「小泉なしでは選挙に勝てない」というカードがあったから。安倍氏は「官邸主導」を口にするが、特に「国の形」と「道州制」に対する官僚の抵抗は必至である。まるで虎(小泉)の威を借る狐のように、飯島首相秘書官は役人を呼びつけ土下座までさせたが、安倍氏にこうした対官僚政治カードはあるのか。縦割り官僚制度の解体は口で言うほど簡単ではない。

国民(マスコミ)を味方につけて、官僚と徹底交戦をする覚悟と戦略が必要である。また来年の参院選で現行議席を減らせば、「リリーフピッチャー」で終わってしまう。小沢民主党に打ち勝つ秘策はあるのか。「民主党の弱点は憲法」である。鳩山・前原等の改憲論者と横溝等の平和憲法維持組が雑居しているのが民主党。次期選挙を「改憲是非選挙」にして民主を分断すれば「郵政民営化選挙」(民主は64議席減らした)同様民主に楽勝できる。

安倍長期政権のための戦略が必要である。歴史認識についても、過去と現在に差があって当然。村山内閣の時代から今日まで世界は変わった。当時の「村山談話」を理解するも、今日、当時とは異なった「安倍談話」があっていい。客観的かつ共通の時代認識こそが、他国、特にアジア諸国との理解を深める。靖国問題などは「小手先」であって正当な国際問題ではないから無視! 「若きプリンス」を日本のために支える気概が全国会議員に求められる。




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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)