第390号  (2006年11月20日 国会議員号)

増田俊男事務局 http://chokugen.com
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米中間選挙の中で

私は米国の中間選挙中と選挙後を通してワシントンに張り付いていた。民主党が議会を制することになるが、今後の米国の内外政策に変化が起きるかどうか確かめたいと思ったからだ。北朝鮮のミサイル発射、イスラエルのレバノン攻略があった7月も、ワシントンで上院外交委員長(Richard Rugar氏)やブッシュ政権の政策立案シンクタンクの責任者と意見交換をした。今回は民主党系のシンクタンクと中国問題の専門家を訪問した。

結論から言うと、米国の経済・安全政策とも基本的には変化はない。しかし、政権内部の人事はかなり入れ替わることになる。Executive分野(日本で言う霞ヶ関)と議会での委員会ポストが民主党に塗り替えられる。私は連日議会ポストの血なまぐさい戦いを目の当たりにしてきた。それは私の事務所が議会にもっとも大きな影響力を持つ弁護士事務所(ロビイスト)の一つにあるからだ。私の現在の秘書はかつてある方の秘書をしていたのだが、幸運にもその御仁がこのたび上院のマジョリティーリーダーに選ばれたので議会情報収集が容易になった。既に2007年度予算は議会を通っているし、FRBはホワイトハウスと議会から独立しているので、金融政策にもさして変化はない。ただ2007年からブッシュ政権は新法案の通過が難しくなるので、ブッシュのレームダック化が顕著になることは確か。この間隙を縫って、中国はアメリカの外庭である中南米とアフリカに資源・軍事コンプレックス戦略を加速させるだろう。

2007年の米経済については、成長が2%に止まるとする悲観論が根強いが、私と同様の楽観論も多い。見方は五分五分といったところだった。今後、日本経済は内需、米経済は外需が牽引役とする私の持論を展開したが、George Washington Universityの経済学博士のようなアカデミックから、経済政策立案CED(米経済開発委員会)の主席エコノミストに至るまで賛同を得たので、私も自信を深めている。住宅部門の落ち込みを景気後退の理由にする向きが多いが、住宅分野のGDPに占める比率は数パーセントに過ぎないし、未だに消費減退に繋がっていないことから強調しすぎの感がある。また、ハワイやフロリダで700億ドルもの売出しが即日完売している。買主の50%以上は外国人。米不動産も外需の影響が大きくなっている。米国の2007年経済見通しは概ね良好といっていい。ハドソン研究所所長のロンドン氏は4%に達するかもしれないと言っている。


北朝鮮問題=中国問題

中国問題の専門家は何と言っても、アメリカン大学アジア研究所長の趙全勝(Quansheng Zhao)教授である。またGeorgetown Universityのアジア専門家David Steinberg博士は民主党の知恵袋である。日本では北朝鮮の核廃絶、拉致問題解決に明け暮れしている感があるが、「北朝鮮の核武装=日本の核武装の権利」という政治力学が常識化している。

アジア専門家に私の考えをぶつけて見た:米国が北朝鮮に武力行使をしないことを宣言している以上、日米は北朝鮮に対する核廃絶圧力は、北朝鮮の経済と国体維持を事実上保障している中国にアウトソーシングせざるを得ない。中国は北朝鮮の同盟国同然なのだから、北朝鮮の核は脅威にならない(歓迎すべき場合さえあり得る)。それは米国の核が日本にとって脅威でないのと同じである。だから中国の対北朝鮮圧力には自ずと限界がある。だから日米は中国に北朝鮮に対する圧力を強化させる政治カードを持たねばならない。

唯一のカードは日本の核武装である(決して核武装をするという意味ではない=政治的脅威創出)。日本に侵略された中国にとって日本の核武装は最大の脅威であり、最大の政治カードになり得る。私の意見に対しては全員「全く正しい」と答え、日米の会話の拙さが指摘された。外務大臣や政調会長の発言は、実に不用意で日米間の充分な会話なしで行われたため、せっかくの対中国カードが無駄になろうとしている、ということであった。


2007年日米最大のキーワードは「インド」!

米国は本年インドと核技術協力合意を交わした。小泉内閣はインドと安全保障条約を推進することに合意した。これは何を意味するか? 日米両国ともフォーカスを避けているので今回は述べない。ただし日米にとって、またアジアの秩序にとって、2007年からの最重要課題になることだけは確かである。



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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)