第409 国会議員号  (2007年5月11日号)

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世界政治トレンド

フランスの大統領選は決選投票の結果、右派・国民運動連合(UMP)党首のニコラ・サルゴジ氏に決まった。保革両派の直接対決の結果は6.12ポイントの大差で保守の勝利となった。サルコジ氏は、労働時間規制撤廃、消費税引き上げ、法人税減税、欧州憲法簡素化による批准、移民・国家アイデンティティー省新設、対米協調等を掲げ、国民の権利、福祉を重点に掲げた社会党のロワイヤル候補を破った。

大統領選の結果が出た5月6日から7日にかけで、パリではサルコジ氏に反感を持つ500名を越す若者が730台の車に放火するなどの暴挙が続いた。フランスにも「革新」の名の下に「働きもせず」、人権を口に福祉の恩恵に与ろうとするとする「不届き者」が多い。

フランスの「良識」は、失われつつある「フランスの名誉」と「国際経済競争力」を取り戻そうとして、あえて国民に増税、企業に減税、より多く労働時間を求めたサルコジ氏を選んだ。国際競争が激化する時代に、もはや国民は権利だけを主張することは許されなくなった。それはまた、フランス国民が今の生活を保証してくれる政府ではなく、自らより豊かな生活を求める自由を保証してくれる政府を選んだことを表している。世界各地で保守政権が主流になりつつある傾向は、今後の日本の政治にも大きな影響を与えるだろう。


日本の選択

日本では7月に参院選が控えている。日本の国民の選択が試される選挙と言われるが、そうは問屋が卸さない。フランス国民がサルコジ政権を選んだのは「革新的」だからである。確かに党の名に「右派」が付いてはいるが、主張していることは全く革新的である。今日の世界政治の傾向は「保守が革新的で、革新が保守的」になっている。国民福祉を抑えて企業優遇、規制緩和による自由拡大は革新的である。

この傾向はそのまま日本の自民党と野党に当てはまる。あえて「自民党」とし与党としないのは、与党の「公明党」は福祉党であって革新的とは言えないからである。また、自民と対野党として「民主党」としないのは、民主党は旧自民党(革新的)と野党(保守的)の野合政党だからである。今日の日本の政界は、フランスのように国民の保革選択を受ける準備が出来ていない。今日の与党と野党では、それがどんな政策であれ国民の選択は全く出来ない。与党は保革連合、民主党は保革野合だからだ。

フランスの選挙で投票率が80%を超え、日本では50%そこそこなのは、「日本の政界が国民の選択を拒んでいる」からである。民主党の革新派(自民的)が自民党に帰属し、また公明党が民主党の保守(旧革新)になるなど、今こそ「政界再編成」が求められる。

今の日本では国民が世界の趨勢を背景にした政治選択ができない。政界を、国民がいつでも時代に即した選択ができる体制にしておくことも政治の重要な責任である。民主党の元気のいい若手議員たちが政界再編成のために立ち上がることを期待してやまない。フランスの大統領選から感じたことを述べた。


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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)