第413 国会議員号  (2007年6月13日号)

増田俊男事務局 http://chokugen.com
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世界の読み方

私は、2000年11月のアメリカ大統領選で、「もしブッシュが勝利しなかったら、皆様の前で腹を切りましょう」と、ある講演会で言ったことがある。大統領選の天王山は予想通りフロリダ州での決戦になったが、同州でのゴアの得票数はブッシュをはるかに上回っていた。もう言い古された話だが、ブッシュに決まったのは、黒人等低所得者層が多く住む圧倒的にゴア支持だったある郡で2つの投票箱が擦り替えられたからだった。

ゴアは投票の無効を訴えて裁判になったが、最高裁で棄却された。これも何度も言ってきたことだが、私は2001年の9.11を事前(2月)に予告した。飛行機をWTCにぶつけるとか、投票箱を擦り替える等の具体的なアイディアは分からなかったが、「何かが起きる」ことだけは私には分かっていた。それは目に見えない「アメリカの存在と繁栄を保障する一種の保険」を知っているからである。

アメリカが存在のために常に守り抜いているのは、ドル防衛のための「市場開拓とマーケティング」という資本主義の基本である。あまり遡っても同じことだから、クリントン時代から説明しよう。クリントン政権は平和時代であり、マネー万能時代であり、世界中のマネーがアメリカに一極集中した時代であった。これも私の口癖であるが、「平和とは戦争の準備期間に過ぎない」。戦争を始めるためには、兵器を作るのに必要なマネーを集めておかなくてはならない。だからクリントン時代は世界中のマネー集めに専念したのである。

しかし、集めただけでは世界のマネーという借金が膨らんだだけで、アメリカのマネーではない。アメリカで膨張した世界のマネーを、合法的に、一挙にアメリカのものに擦り替えるにはどうしたらいいか。世界のマネーが形を変えている株式、不動産、債権価格を大暴落させればいい。そうすれば世界は大損をし、世界の損の分だけアメリカのモノ(儲け)となる。

このように世界のマネーを定期的にアメリカのマネーに変えるのが、好況・不況のサイクルである。2001年4月からのNY市場の大暴落で世界のマネーがアメリカのモノになった。ブッシュの役目はアメリカの所有になったマネーをモノに変えて世界に売り捌くことである。そのためには世界にモノの需要を喚起しなくてはならない。世界の現状を眺めているだけでは大した需要増は見込めないから、大需要を喚起するには“Scrap and build”(スクラップ・アンド・ビルド)の原理を活用しなくてはならない。つまり世界中に戦争を起こし、長年掛けて造ったインフラを破壊して、膨大な復興需要を創造することである。

バクダットの自動車爆弾テロで、自動車代と爆弾代を足した金額より破壊されたビルの再建費のほうが高ければモノの需要喚起として成功である。平和時代10年、戦争時代20年が今までのサイクルだから、我々には戦争時代がまだ14年ほど残っていることになる。こうした資本主義の基本的鉄則をベースに時代を読む必要がある。


軍事費拡大のサイクル

アメリカはアフガンに続いてイラクに侵攻し、両国に親米政権を樹立した。両国の政権誕生後の治安はまさに「内戦状態」。つまりアメリカはアフガン、イラクを自ら軍事平定した後は国民同士の内戦に誘導したと言える。独裁者を倒し民主政府を樹立したという形を作ったが、中身は国民同士の血みどろの殺戮である。サダム・フセインやタリバン政権のオマール師が統治していた頃は1カ月に1000人を超す死者など出したことはなかった。

同じパターンはパレスチナにも当たる。イスラエル対パレスチナの対立は、今やレバノン政府対パレスチナ武力勢力の内戦状態になりつつある。戦争市場にアメリカが点火し、内戦のエンジンをフル回転させているようなもの。兵器需要喚起のために初期キャンペーン(戦争)をした後は、消費者(紛争国自体)が自らのコストでキャンペーンを拡大するパターンである。

中東復興需要を牛耳るアメリカに基地を提供して米企業の下請けになるチェコやポーランド。砂糖(復興需要)に群がるアリの如く、米軍基地を提供する国が行列。一度米軍基地を許したら、もはやアメリカ領である。「冷戦の再現だ」と叫ぶロシア。叫ぶより「陣取り」が先なのが資本主義時代の鉄則。知れば知るほど冷酷な世界。今こそ日本は率先して「日本の心=和の精神」の拡大に専念すべきではないのか。「日出る国、日本」に向かって進もう(6月5日、プラハでの国際会議に日本人でただ一人招待された上、ブッシュ大統領の目の前の指定席まで与えられた。イスラエル、イラク、シリア、サウジ、エジプト、フランス、スペイン、ロシア、中国等々の代表と親しく話し合った。また、日本の中心的外交指針、「自由と繁栄の弧」のPRに努めた。来る勉強会では真実の話ができると思う)。

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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)