第415 国会議員号  (2007年6月22日号)

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信用不安?

私は2007年の世界経済が1998年に非常によく似ていることに注目している。98年6月はドル円で円は135−145円の安値を付けた。今日と同様、内外金利差を背景にキャリートレード(安い円を買ってドル資産に投資する)が止まることなく進行していた。

ドルの押し目を拾おうと思っていた当時の大手生保等機関投資家も、「こんな円安水準では外債投資に手が出せない」と言いながら、止まることのない円安に耐えかねて一斉に外債投資に動いた。だからあっという間に145円という最安値を付けたのである。

最近になって、大手生保の財務担当者は「いつになったら円高になるかと待っていたが、もう待てない。今の水準で外債投資をするつもりだ」と言い始めた。これが機関投資家の合唱となりつつある。このままでは1998年と同じく、円安がどこまでも続く展開となるだろう。「8月円高説」があったが、今は消え去ってしまった。

ところが、一方では米国債と社債の金利差であるスプレッドが年初の0.94%から最近では1.04%まで拡大している。これは信用不安が静かに進行していることを表している。さらに、日米卸売物価基準の購買力平均が115円前後まで下落してきた。これは明らかにドル高・円安の行き過ぎを示唆している。

私は1998年の円安続行の最中、「10月上旬には110円になる」と言って「笑われた」が、奇しくも10月9日に111円の円高となり、名誉挽回となった。当時、円高を唱えたのは私と日本マクドナルドの藤田田社長(故人)だけだと言われた。

98年10月の円高を私が予想した理由は、累積したキャリートレードの円返済が一斉に起こると考えたからである(円を買って返済する)。現在進行中の円キャリートレードはやがて限界に達する。買いにも売りにも必ず限界がある。恐ろしいのは、市場が一斉に限界を認識することである。静かに進行している信用不安、特にヘッジファンドのキャリートレードの限界点接近。

好材料に恵まれて順調に高値を更新している株価にも、理由なき不安が潜んでいる。何事も「いい時こそ、要注意」である。

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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)