第418国会議員号  (2007年7月17日号)

増田俊男事務局 http://chokugen.com
e-mailアドレス info@chokugen.com

欠けている参院選の論点

日本では支持率という名の「人気」で政治が左右されるようになってきた。政治家は「当選しなければただの人」だからどうしても当選第一主義、すなわち人気第一主義にならざるを得ない。一方、国民(有権者)の方々は日々の生活で忙しいから、真剣に国益とは何か、世界の中の日本の位置付けは、国家のあるべき姿は、といったことを真剣に考えている暇などないことから、どうしても判断をマスコミに頼らざるを得ない。だから政治に関心がある人は日曜日の早朝からフジテレビ、NHK、テレ朝を視ることで、何となく日本の政治が分かったような気になるのである。 

テレビ局や新聞社は事あるごとに政党支持率を発表する。社会保険庁の「杜撰」が明らかになると、「こうしたことの責任は誰にあると思いますか?」と聞く。「最初に杜撰に気が付いていながらこれを隠蔽した官僚と、杜撰を知っていながら黙認した時の政権」が本当の責任者である。これほど大規模な国民愚弄を単に杜撰な行政だけで済ましていいものか。隠蔽を画策し実行した官僚とこれに目をつぶり続けてきた政治家たちの重大な犯罪を国民は許してはならない。 

今回の「社会保険庁事件」の被害者国民を救うため、安倍政権は特例として時効の適用を撤廃したが、これでは片手落ちである。社会保険庁と隠蔽に協力した官僚と政治家の刑事犯に対する判決時まで刑事訴求時効撤廃の時限立法案を同時に通すべきであった。社会保険庁を解体して、国民の被害を補填することだけで、「この安倍がすべての責任を取ります」と言っても、そうは問屋は卸さないのでは。

組織を解体し国民の被害を補填したらそれで歴代の内閣の責任が果たせるなら、この国は公務員(官僚も政治家も公務員)は「ドロボーをして見つかったら返せば無罪放免」ということになるではないか。国民の信頼を受け国民の財産を預かる公務員こそ最も厳しい監督・責任下に置かれなくてはならない。ならば、時効を撤廃して徹底的に「国家の犯罪」を追及することなしに、「私が責任を持ちます」などと言えないはずだ。我々国民は安倍首相に、「寝ぼけたことを言わないでください」と言い返すべきである。

一方、民主党は社保庁の杜撰さを発見、今回の騒ぎの発端の功労者のようだが、支持団体である公労協の労働時間短縮要求など聞き入れながら、彼らの杜撰な仕事ぶりを知らなかったわけがない。なぜ今なのか。なぜ10年以上前に厚生大臣を歴任した小泉内閣のときに摘発しなかったのか。なぜ50年以上沈黙していたのか。与野党議員がもし本当に知らなかったとしたら、議員として失格である。自民党はもとより、野党も知らなかったはずがないではないか。与野党公然の秘密だったと考えるのが自然というもの。確かに不勉強議員は相当数いるだろうが。安倍首相の「戦後レジームからの脱却」とは立派なお言葉だが、与党も野党もお互いに都合が悪いことはひた隠しにして、表向きは喧々諤々。 

これでは戦後の「55年体制」とどこが違うのか。今回の参院選でもし民主党が「国家の犯罪」の追及に徹しなかったら、自民党と共に55年体制の同じ穴の狢(むじな)である。我々は今回の参院選で社保庁事件での国家の犯罪の徹底的追及を打ち出した党を支持すべきである。もし与党も野党も共に都合の悪い「国家の犯罪追及」から逃げるなら、残念ながら我々は日本の政治を諦めるしかない。


*「目からウロコの会」スペシャル<大阪・夏の陣>に向けて全力を挙げています。

参院選直前!選挙後に起こる経済・政治の流動を明快に述べます。乞うご期待!



※「時事直言」の文章および文中記事の引用ご希望の方は、事前にサンラ・ワールド株式会社 増田俊男事務局(TEL 03-3955-2121)までお知らせ下さい。

ご意見ご感想は:

E-mail:info@sunraworld.com

発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)