第455  国会議員号  (2008年02月22日号)

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福田首相にモノ申す」
The Great Depression(大恐慌)寸前のアメリカ経済

2月18日号(No. 454)は「バーナンキ(米FRB議長)にモノ申す」という題で議長の米経済認識、FRBのManifest Destiny(何が何でもしなくてはならない使命)、金融・財政政策発動のタイミング、迫り来るThe Great Depression(1929年型の大恐慌)のリスクについて述べた。今アメリカの経済危機を救えるのは日本しかないと考える。だから福田首相の責任は重大であり、与党にそのことを認識してもらいたいと願っている。もし日本がアメリカ経済救済に動かなければ、アメリカにとっての選択は「国際戦争」しかなくなる。

さて、福田首相をはじめ日本の政策担当責任者にアメリカ経済救済提言をする前に、アメリカ自身としては戦争以外に救いようがなくなっているアメリカ経済危機をもう一度認識していただきたいと思う。

先ず、今回のアメリカのサブプライム問題に端を発した世界的信用収縮と資産バブルの崩壊は複合的に担保し合った金融商品がレバレッジを重ね、まさにピラミッド化しながら世界中に拡散した結果である。したがってサブプライム問題の発端地のFRBでさえ信用・資産収縮の規模と範囲を把握できないでいる。中央銀行さえ知り得ない資産バブル崩壊の実態を知るには、かつてのPaul Volcker(ボルカー)のように、手を打つ前に「放置」して市場に答えを求めればいい。つまり、地価も株価も落ちるところまで放置して自律調整作用が働き始めるまで待つ戦略である。患者の風邪が治るかどうかわからないのに最後のアスピリンを飲ませる医者はやぶ医者である。その意味ではバーナンキFRB議長はやぶ医者といわれても仕方がない。今アメリカでインフレが加速している中、景気重視でFRBがさらなる利下げを続ければハイパーインフレは必至だろう。景気後退がインフレにブレーキを掛けるというバーナンキの期待は間違っている。先の見えないEquity market(株式市場)から債券や商品市場に資金が移動するから商品価格は上昇して結果消費者物価を押し上げる。FRBの期待に反してアメリカ経済はいまやStagflation(不況とハイパーインフレ)に陥ろうとしている。


「日本がアメリカと世界を救う」(徳間書店)

内需拡大後の、資産バブル崩壊で不況のドン底にあるアメリカ経済が成長に向かうことができる唯一の機会は利下げによるドル安を梃子に外需拡大、外需依存型経済の推進のみである。同盟国日本の役割は内需拡大を促進しアメリカ経済が目指す外需依存戦略に迎合することである。日本が内需拡大型景気政策を推進することは、今まで国民に実感が持てなかったバランスシート上の景気を国民実感型景気に切り替えることにもなる。

今、福田首相がアメリカのため、世界のため、結果日本国民のためになすべきことは、思い切った財政出動、公共投資である。極度な予算きりつめ型の消極的財政健全化戦略から一挙に積極的財政健全化政策、すなわち果敢でタイムリーな公共投資で民需拡大、内需拡大で歳入増をはかる方向に舵を切り替えるべきである。アメリカの政治がウルトラCの国際戦争に走る前に日本が積極財政に切り替えることを世界に宣言すれば、国際資金が商品市場から日本のEquity market(株式市場)へ殺到するだろう。株高、資産高で日本の銀行も動きやすくなり不動産市場も活性化する。「オールドファッション識者」の話を聞くのはいい加減にして、ここらでアメリカのため、世界のため、わが国民のため、福田首相の大英断を期待したい。

          ※ 私の緊急報告「夏までの投資戦略を直言」にご期待下さい。



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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)