第456  国会議員号  (2008年02月28日号)

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嵐の前の静けさ

ニューヨークも東京市場もここのところ高値引けが続き安定した相場展開が続いている。

前回本誌で述べたようにバーナンキFRB議長は市場と議会に従って3月18日も4月30日も利下げを繰り返すだろう。ドナルド・コーンFRB副議長も景気重視インフレ軽視を明白にしている。今アメリカ経済は一歩一歩インフレと景気後退のスタグフレーションへ向かっているのである。ユーロがドルに対してはじめて1.6倍になったのもドル信認の極度な低下を意味している。EU(ヨーロッパ連合)はユーロ採用国(15カ国)に厳しい財政規律を求めている。一方アメリカの経常収支赤字(2006年)は前年より7.5%増で史上最高の8千億ドル(約86兆円:日本の国家予算を上回る)を突破、10年間でなんと6.5倍。そこへドル刷り増しと連続利下げ。これでどうしてドルの信認が得られようか。アメリカ経済が付加価値創造を求めず、基軸通貨の特典のみに依存してきたことのつけがいま回ってきたのである。ここまで来ればもはや大波乱は避けられないだろう。大波乱とは「アメリカが作った信用収縮を含むすべての赤字が全世界の負担となって押し寄せてくること」。わかり易くいえば「世界的大暴落」である。つまり、アメリカが長年かかって作った赤字を世界中の国民が一瞬にして背負わされることを意味する。時々起きる世界恐慌は「アメリカの累積赤字瞬時返済イベント」と考えると辻褄が合う。基軸通貨国の横暴といえばそれまでだが、いつまでもunfair(不公正)は続かない。今日の相場を見ているとプロは売り増し、素人は買い増しているように思われるが、、、。昨年7月、「利益確定、現金枕に当分お休み」と言ったことを思い出す今日この頃である。


これからの時代

古い話になるが、1990年アメリカが不動産ブームだった頃、「増田さんは将来何になりたいですか」と聞かれたことがある。「次は国を売買するブローカーになりたい」と即座に答えた。相手は、私のことを「馬鹿じゃないか」と思ったようだった。特に最近注目を集めているのがSWF(Sovereign Wealth Fund=政府系ファンド)である。運用総額は2.5兆ドル(約270兆円)だから、日本の国家予算の約3倍に相当する。しかも今後増え続ける。SWFは市場原理に従うとはいっても国家の資金である以上国益に反する運用はできない。今後運用の効率化や国家間の利害対立関係からSWF競争が激しくなりSWFの合併やM&Aが盛んになっても不思議ではない。グローバル化の進展と共に、SWFの統廃合が先行して国家の統廃合が誘発されるのは当然の成り行きだろう。いま我々が道路財源をどうするかと議論しているうちにマネーの大河に飲み込まれようとしている。読んで字のごとく" Capital talks "(資本がものを言う)の時代になってきた。「資本主義時代の断末魔」か。かつての私の夢、国を売り買いするブローカーになる気にはもはやなれない。風車に立ち向かうドンキホーテのように、無謀を承知でお経を読みたくなった。資本に操られるロボット時代にストップをかけるために。

* 夏までの相場指南を録音しました。ご参考まで。



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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)