第458  国会議員号  (2008年03月13日号)

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世界的暴落が何故アメリカの借金払いか!?

前回本誌で「世界的(資産の)暴落はアメリカの借金払いに他ならない」と述べたところ、理解に苦しむとの声が多く寄せられたので「わかり易く」(少し下品になるが)説明することにした。先ず、1)、アメリカは恒常的対外債務国であること、2)、恒常的国際収支赤字国であること、3)米ドルがいまなお国際基軸通貨であること、を理解していただきたい。1)と2)はアメリカが潜在的経済破綻国家であることを表している。アメリカ経済が今日まで破綻しないでいられる唯一の理由が3)である。

米ドルが基軸通貨であるということは世界の貿易決済通貨のほとんどが米ドルであることであり、そのためアメリカ以外の国の間で輸出入が発生すると決済通貨であるドル需要が自動的に創造され、アメリカはこの他力本願で得たドル需要増加分だけ赤字払いのためにドル価を下げることなくドルの増刷ができる。もしアメリカのドルが円のように基軸通貨で無かったら、アメリカは既にDefault(債権返済不能)に陥っている。レーガン政権以来アメリカは「脱工業主義」を採用、金融大国、ソフト大国を経済指針としてきた。マネー、モノ、情報、人に国境がなくなったグローバル化時代に即した功利的な指針である。供給過剰で競争の激しくなった時代にわざわざモノ作り国になる必要はないと考えたのである。情報をコントロールしてマネーをアメリカに集中させ、集まった世界のマネーで老朽化したインフラを修理し、国防予算を増額し、さらに残ったマネーを国民にばら撒き、返済能力が無い者にまで大量にプール付の家を建てさせてGDP(国内総生産)を押し上げようとする。

消費大国とはGDPのほとんど(70%)を消費することであり、また成長(GDPを伸ばす)を維持し続けることとは国民の生活水準を上げ続けることであり、それは必要以上の消費、すなわち贅沢と浪費を続けること(バブル促進化)に他ならない。しかし動物でもそうだが、いくらアメリカ人の胃袋が大きいといっても見境なく食べ続けるといつかは必ず腹痛を起こす。アメリカが手形(債権)を大量に発行してアメリカに世界のマネーが集まっているときはアメリカは金持ちでドルも高くなる。しかしいくらマネーがあるからといって返済能力の無い者にまで家を建てさせているとやがてそれがアダ(毒)となってアメリカは腹痛を起こすことになり、一切モノが食べられなくなり(消費が落ち=輸入が減り)、働けなくなり(雇用が減り)、働けないから収入が無くなり(所得が落ち)、寝たきり病人(不況)になる。FRB(連邦準備理事会)が病人の口に「飴」(利下げ、資金供給)を入れても病気は治らない。毒にあたった寝たきり病人に所得は無いから手形が落とせるわけが無く、病人が発行した毒気(サブプライム)を帯びた手形(金融債権)は全部不渡り同然になる。アメリカ発行の不渡り同然の手形(アメリカの借金)に金を払ったのは世界。世界のマネーで修理したアメリカのインフラ、増額された防衛費、返済能力の無い者が買ったプール付の家を世界の債権者は差し押さえることも自国に持ち帰ることもできない。

アメリカの借金を肩代わりして大損をしたのは世界である!では世界はどうしたらいいのか。腹痛のアメリカが下痢をして腹から毒気がなくなって、元気になって腹を空かしたアメリカがまたもや旺盛に食い始めるまで待つしかないのだ。私が前々回の本誌の「バーナンキに物申す」でバーナンキの景気回復策を非難したのを思い出してほしい。バーナンキは腹痛で苦しむ病人の口の中に無理やり「飴」を入れて、腹痛を長引かせているだけだ。バーナンキのすべきことは、腹痛で苦しむ病人を放っておけばいいのだと非難した。放っておけば必ず病人は「下剤」(暴落)をして腹中の毒が出て、あっという間に元気になる。

世界はアメリカの恐るべき食い気、そして満腹になった後の腹痛、下痢、元気回復のサイクルに引っ張りまわされながら結局アメリカの借金を払わされているようなものだ。かなり下品な話になったが、これでおわかりいただけたと思う。二度と同じ質問が来ないことを期待する。



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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)