第486(2008年09月08日号)国会議員号

増田俊男事務所 http://chokugen.com

総裁選出馬という「売名行為」に群がる卑しさ

福田総理の突然の退陣後、麻生氏の出馬表明に続いて出馬ラッシュが続いている。まるで金魚のなんとかのようだ。各派閥も、あそこが出すなら我々もと、マスコミ受けする人選を急ぐ。自民党の総裁選は事実上日本の最高権力者の選択であり、たとえ制度の違いがあるとは言え、アメリカの大統領選にも匹敵する。毎日報道される出馬合戦が世界に報道されることに私は大きな危惧を禁じえない。これでは政治三等国日本が四等国になってしまうのでは。20名の支持を取り付けるのがやっとでも、出ておけばマスコミに顔が売れて次期選挙に有利だから出ない手はない。だから「ゾロゾロ、ゲロゲロ」(ある企業のコマーシャル)。マスコミが「マニフェストで堂々と戦うべきだ」と言えば、かつて狭き門だった大学入試時よろしく一夜付けのお勉強流行(ばやり)。第一等政治国アメリカの最高権力者を決める選挙報道との格差!何をか況やである。

自民党総裁選=猿蟹合戦

今回の自民党総裁選は「経済政策を最大の論点にすべきだ」とマスコミは主張し、積極財政の麻生氏と健全財政の与謝野氏の一騎打ちと囃す。すると今度は小泉改革再興を掲げる「上げ潮派」が名乗りを挙げる。「日本の株価が下がって不況に直面しているのは小泉『改革の行き過ぎ』からだ。ホリエモンを生んだような規制緩和と市場の『自由化の行き過ぎ』を是正し秩序ある市場を取り戻さねばならない」、といえば、「小泉改革を誰が骨抜きにしたのだ。小泉首相の構造改革と規制緩和断行こそが『いざなぎ景気』を凌ぐ好況をもたらしたのではないか」、と反論する。麻生氏は減税や補正予算増額で景気浮上を唱え、他は健全財政や規制緩和を主張する。マスコミはどうしても自民党総裁選、ひいては日本の最高権力者の選択を「猿蟹合戦」に持ち込みたいようだ。

出馬される方々は、ご自分は日本国指導者の資格があると思っていられるのでしょうか

積極財政、健全財政、規制緩和等々の政策論議の前に肝心な経済の基本議論が欠けている。日本の政治家の皆様も「人とマネーと情報に国境がなくなった」と口にするが、その意味するところがわかっていないようだ。各々方の言われる抽象的マニフェストからグローバル・センスはまったく感じ取れない。膨大な(日本の国家予算の数倍の)国際浮遊資金が日本市場へ誘導されれば日本経済はたちどころに好況になる。一国の経済戦略はグローバルな視点で構築されなければ何の効果も期待できない。アメリカの景気浮上策の「定番」は米国内経済のバブル(インフレ)化と国際(他国領土内での)戦争である。アメリカの株価と地価が上昇し始めるとアメリカ市場に世界の浮遊資金がFinancial Vehicle (世界資金の渡し船)に乗って集まり始める。相乗効果でアメリカは資産バブルとなり、やがて崩壊する。世界が手にしたFinancial Certificate(船荷証券に匹敵する金融証券)は紙くずと化すが、世界の浮遊資金がアメリカで形を変えたアメリカの橋も高速道路も(バブル崩壊後必要となる)兵器もすべてアメリカの資産として残る。バブルが崩壊しても株価が暴落してもアメリカが国益を損ねることはない。常に「世界の損はアメリカの得の原則」を貫くアメリカの政治指導者ここにありである。アメリカの資産バブルが崩壊すると、世界資金は急速にアメリカから逃避する。アメリカ経済は国際資金依存型だからバブル崩壊で国際資本が逃避すると直ちに国際資金の還流を計らねばならなくなる。資産バブル誘導型以外の対米国際資金還流策は「戦争」以外にないのである。2001年後半、ITバブル崩壊後の国際資金逃避で不況に陥りかかっていたアメリカがなぜ2002年から5年間も好況になったのだろうか。

それは2001年9月11日の同時多発テロをきっかけに突入したテロとの「戦争効果」である。国際戦争が始まると同時に「寄らば大樹の陰」で国際資金は再びアメリカに還流したのである。国民に不労所得という名の世界の富を与える指導者は立派な指導者であり、国民が汗をして蓄えた国民資産をまんまと他国に取られる指導者は愚かな指導者である。

自民党総裁に名乗りを上げたお歴々はグローバル時代の国益意識と戦略をお持ちだろうか。

飛んで火に入る夏の虫!

誰が首相になっても、参院を制する民主党小沢代表は福田首相に対したと同様今後も一切与党と妥協はしない。今後も当然「ねじれ国会続行」で国会は相変わらず機能しない。与党は衆院の「数の力」で強引に国会を機能させることが出来るが、今日の日本のマスコミと日本の事情を理解できない世界の世論は「数の暴力」と見なすだろう。したがって次期首相の運命はまたもや福田首相の運命をたどることになる。小沢代表は新首相と喜んで党首会談を持つが、それは新首相を国民の目前で愚弄するためである。小沢氏は参院の優位性を100%以上に使いこなし、いささかなりとも与党に国会主導を許さない。その結果は、屈辱的対小沢交渉、数の暴力批判(正式手続を踏んでも批判される)、国会機能麻痺で新首相率いる与党は早晩行き詰まる。福田氏が「小沢氏は私のいかなるアプローチにも一切聞く耳を持ってくれなかった」とぼやいて退陣したが、今度の新首相は「恨み節解散」に追い込まれ、結果与党は衆院選で大敗を期すこと必至。さあ、これで麻生氏はご自分が「飛んで火にいる夏の虫」であることがわかっただろう。その他大勢の候補者は売名行為だから論外だが、このままでは麻生氏は福田氏よりはるかに深刻な事態に直面することになる。

麻生氏は奇跡を起こす!

こうした必然的与党の自滅事態から脱却し、衆参両院で自民が過半数を手に出来る「秘策」がある!「吉田茂」の血をひく麻生氏は「時がきたら」、それが何であるかに気付くはずである。衆参両院同時選挙で天下の政治屋小沢一郎を奈落の底へ叩き落とし、自民党が単独過半数政権を樹立することが確実になることがやがてわかる。麻生氏は、ある一瞬に「奇跡」を起こすことになるだろう。後になれば、その奇跡も「なるほど」と誰もが頷く「コロンブスの卵」。日本の国会を機能させるため、世界に日本の存在感をアピールするため、世界の資金を日本に集中させるため、日本人が日本を誇りに思うため、日本に奇跡が起きる! 「麻生先生、経済政策であろうとマニフェストであろうと、そんなことはどうでもいい。すべてはあなたが衆参両院で過半数を握ってからのことです」と言っておきたい。

最後に株式について一言:

先週金曜日(9月5日)本稿で、「今日は売り方が暴落を演じたが、買い方に乗せられたのではないか、来週(9月8日)買い方が暴騰を演じ、売り方は積み上げを強制されるのではないか」と述べた。いまさら説明する必要もないだろう。

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