第492(2008年10月03日号)

増田俊男事務所 http://chokugen.com

麻生首相のグローバル・センスで景気回復
The Homeland Investment Actがアメリカを好況に導いた

小泉元総理が経済政策について丸投げしていた竹中平蔵金融大臣(当時)の強い「指導」で日本の金融機関がようやく不良債権問題を解決しようとしていた2004年、The Homeland Investment Actと言う時限立法が米議会を通過し、同年10月22日実効となった。後にThe American Job Creation 2004と並んで米国の景気を急速に押し上げる要因となった。私はこの法の立案から制定までの重要な役割を果たしたある法律事務所(ロビイスト)に私のデスクを置かせてもらっている関係で、本法の国際戦略を熟知していた。それは竹中金融相の邦銀の国際金融参入目標達成時期と深く関わっていたのである。

邦銀の国際金融再参入のタイミング

当時竹中大臣は日本の金融機関が不良債権を解消して国際金融に参入する時期目標を2005年4月に定めていた。竹中大臣は銀行側の債権自己評価報告を認めず徹底した監査で不良債権を顕在化する一方で、思い切った公的資金注入を断行、大手邦銀のBIS規制(自己資本率)の国際基準達成(12%以上)を急いでいた。竹中大臣の強力な指導の下で日本の大銀行は目標の2005年を待たず2004年10月に目標達成することが出来た。その結果大手邦銀は10月から中国へ進出、支店数を競うまでになった。

The Homeland Investment Actはグローバル戦略

アメリカは日本の銀行が過剰不良債権で国際金融に参入できなかった2004年までの10年間、中国の急成長に歩調を合わして対中投資を拡大していた。2004年から2005年、中国では特に不動産投資が加速しバブル現象が随所で見られていた。2004年までのアメリカの中国進出企業はいずれも高成長、好業績、高収益を謳歌していた。アメリカは日本同様、海外事業所得に対して本国並みに課税される。しかしアメリカでは海外所得をそのまま海外に再投資すれば、最終的に所得を本国に持ち帰るまで課税されない。The Homeland Investment Actは、本法施行日(2004年10月22日)以降一回のみ、最大$500M(約530億円)を上限に利益配当金、余剰金その他事業所得を本国に持ち帰ったときは条件付きで事業税35%を5.25%に低減するというものであった。事業税85%の減免を受けるためには、本国に持ち帰った事業所得を雇用増大、研究開発、財務強化、キャピタル・インベストメントに再投資しなくてはならない。本法の投資効果は今回アメリカと世界の大関心事、不良債権買取案$700 billion (約75兆円)に匹敵する$500 billionであった。毎年蓄積される所得の再投資を繰り返していたアメリカの中国進出企業は一斉に本法の恩恵にあずかることとなり、進出企業の事業所得が一斉に本国帰還を始めた。本法には、この資金シフトのギャップを邦銀に埋めさせる計画が隠されていたのである。竹中大臣が邦銀に課した国際金融参入目標時期(実際は2004年10月)とThe Homeland Investment Actが実効された2004年10月22日を見れば自明である。アメリカは中国の経済成長がもっとも高い時期に投資して大きな投資効果を挙げ、中国経済のバブル化でリスクが高まると資金引き揚げ、日本に肩代わりをさせたのである。当時の私は竹中氏はどこの国の大臣なのだろうかと思ったものである。そしてアメリカの一石二鳥、いや三鳥のグローバル戦略に舌を巻いたものであった。

麻生首相の景気回復グローバル戦略

日本のマスコミはまったく関心を示さないが、麻生首相はThe Homeland Investment Actの日本版を提唱している。アメリカの例でわかるように日本企業の海外所得、余剰金等の帰還額は優に20兆円を超えるだろう。アメリカと同様に雇用や、特にキャピタル・インベストメント、インフラ投資の条件を付ければ、株価上昇はいうまでもなく、景気押し上げ効果は絶大である。本件の景気浮上効果の大きさは、補正予算の1兆円や2兆円などとは比較にならない。今こそ日本はThe Homeland Investment Actを採用すべきである。小さい政府より、大きい民間を動かしてこそ景気は回復する。麻生首相のグローバル・センスが日本経済の再生を約束する。


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