第493(2008年10月07日号)

増田俊男事務所 http://chokugen.com

アメリカ破れて山河あり

アメリカの金融機能不全からアメリカ経済が麻痺状態に陥っている。飛行機なら片翼飛行。こうした経済下では市場も当然機能不全である。金融機関同士の不信も高まりコール市場にいくら中央銀行が資金投入しても市場は閑散そのものである。まさにアメリカの金融システムの死に体である。市場からの資金の逃避は止まるところを知らず、投資熱は完全に冷えきっている。こうした状況下で今なおアメリカの貧富の差は拡大を続けている。1980年所得ランク上位1%は全所得の8%であったが、現在の富裕層はなんと20%を懐にしている。富裕層は十分過ぎるほどの耐久消費財や贅沢品を持っているから所得は消費に回ることは少なく、また成長率の高い海外投資へ向かうので国内の投資に貢献しない。ほとんどのアメリカ家庭の所得は常に家庭生活を支えるのに十分ではなく、いまやアメリカでは夫婦共稼ぎは常識。また労働時間はかつての悪名高き日本を超えている。原油高やインフレで家計の帳尻が合わないで苦しんでいる時に、住宅価格高騰に遭遇したので借金に活路を求めることになったのである。そして今や住宅価格暴落と不況に拠る失業で平均的アメリカの家計は破綻しようとしている。見逃してはならないのは、アメリカの労働者個人の生産性は戦後一貫して上がり続けてきた事実である。つまり生産性向上の恩恵は1%の富裕層に取られ、労働者の所得はむしろ年々下がってきたのである。

こうした「ひずみ」が時と共に拡大し、家計を破局に追い込み、ついに経済が破綻して大恐慌になるのである。過去に所得上位1%が国の富の20%を占めた時を調べてみると、なんと1929年大恐慌前夜であったことがわかる。所得格差が恐慌の原因であることを忘れてはならない。


日本は平等社会

日本でも近年「格差」が問題化しているが、先進欧米諸国に比べると無いにも等しい。

アメリカでは大会社のCEOが30億円もの年俸を取るのは珍しくないが、日本では文化として許されることではない。日本はまれに見る中産階級社会であり、逆説的には、日本はアメリカのように周期的経済恐慌になりにくい社会構造になっているのである。

今日世界は戦後初めての極端な信用不安に落込んでいる。それはアメリカ経済への不信でありドルの信認の低下であり、モノへの傾倒による価格インフレである。そしていつものように国民生活が犠牲になる。こうした一種の悪循環がもっとも起き難いのが日本である。

今に世界は、遠い極東にジパングというユートピアが存在することに気がつくだろう。

アメリカのように追わず、求めず、ただひたすらに待つのが日本であり、これこそ日本が誇りとすべきところである。無策の策!最高ではないか!


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