アメリカ破れて山河あり
アメリカの金融機能不全からアメリカ経済が麻痺状態に陥っている。飛行機なら片翼飛行。こうした経済下では市場も当然機能不全である。金融機関同士の不信も高まりコール市場にいくら中央銀行が資金投入しても市場は閑散そのものである。まさにアメリカの金融システムの死に体である。市場からの資金の逃避は止まるところを知らず、投資熱は完全に冷えきっている。こうした状況下で今なおアメリカの貧富の差は拡大を続けている。1980年所得ランク上位1%は全所得の8%であったが、現在の富裕層はなんと20%を懐にしている。富裕層は十分過ぎるほどの耐久消費財や贅沢品を持っているから所得は消費に回ることは少なく、また成長率の高い海外投資へ向かうので国内の投資に貢献しない。ほとんどのアメリカ家庭の所得は常に家庭生活を支えるのに十分ではなく、いまやアメリカでは夫婦共稼ぎは常識。また労働時間はかつての悪名高き日本を超えている。原油高やインフレで家計の帳尻が合わないで苦しんでいる時に、住宅価格高騰に遭遇したので借金に活路を求めることになったのである。そして今や住宅価格暴落と不況に拠る失業で平均的アメリカの家計は破綻しようとしている。見逃してはならないのは、アメリカの労働者個人の生産性は戦後一貫して上がり続けてきた事実である。つまり生産性向上の恩恵は1%の富裕層に取られ、労働者の所得はむしろ年々下がってきたのである。
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