第494(2008年10月15日号)

増田俊男事務所 http://chokugen.com

久々に飲んだカンフル剤が効きすぎた

史上最悪の先週後の週明け10月14日火曜日、ニッケイ平均は史上最大の上昇率をマーク、1171円高、先物にいたっては1660円高。NYダウ平均も月曜、936ドル高で1933年以来の高騰を演じた。ヨーロッパをはじめアメリカでも主要銀行への公的資金投入が決まったからである。先般から私は議会承認されたアメリカの金融機関の不良債権買取75兆円の支援策は「片手落ち」と言ってきたが、公的資金投入で両足が地に着いた形となった。

何度も述べてきたように、金融機関は価値を創造しない。価値を創造する機関、すなわち実体産業に必要資金を流すパイプ役である。経済回復にとって金融機関の健全化は重要であるが、本命ではない。すなわち金融機関が健全になったからといって経済が不況から脱出できるとは限らない。不況を脱するには価値を創造する実体経済が今日の停滞から成長へ向かわなくてはならない。そのためには民間需要を喚起するための公共投資と生産性向上のための民間投資が必須である。

先進国が金融機関救済に膨大な公的資金を集中させるがために、肝心の国内需要創造のための公共投資を怠れば、「一難さってまた一難」で、不況風は止まらない。

今回の暴騰で、アメリカを中心とした経済が回復に向かうと考えるのは早計である。アメリカには、主要銀行に250 billion(約26兆円)の公的資金を投入する前に5000兆円を優に越すリスク債権が存在していることを忘れてはならない。金融機関の救済はカンフル剤であって根本から病気を治すものではない。アメリカ経済は今なお重病であり、痛みは消えても今なお癌は進行している。

それにしても、そろそろ世界市場が日本経済を見直してもいい時期なのだが。アメリカに比べれば日本の実体経済は顔色もいいし、癌も無い。おまけに超安に評価されている。アメリカの建国の父、トーマス・ジェファーソンの言葉を紹介しておきたい

I believe that banking institutions are more dangerous to our liberties than standing armies… if the American people ever allow private banks to control the issue of their currency, first by inflation, then by deflation, the banks and corporations that will grow up around the banks will deprive the people of all property until their children wake-up homeless on the continent their fathers conquered. Thomas Jefferson 1802

(銀行は国民にとって戦争より恐ろしいものだ。銀行に札に代わる金融商品を発行する権限を与えると、世の中をインフレにしたりデフレにしたりしながら、銀行と共に栄える企業と共謀して国民からすべての財産を奪い取る。そしてその結果、国民の子孫たちは、せっかく建国の父たちが勝ち取ったアメリカ大陸で生まれつきのホームレスになる)。

206年前のアメリカの建国の父はすでに今日の銀行の問題点を見抜いていた。

我々はそろそろGreed (欲望)を主体とする自由と資本主義を考え直すべきではないのか。

「いったいお前たちは今まで何をしてきたのか」と先達に叱られる前に。


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