第495(2008年10月17日号)

増田俊男事務所 http://chokugen.com

(下記はプライベート・コンサルティングをお受けになった皆様にお送りしたニュース・レターです)

株価はどこまで下がるのか

米財務省、FRB(連法準備委員会)が策定した70兆円の不良債権買い取りのための金融機関救済案が米上院、下院を通過した翌日株価は高騰したと思いきや、あっと言う間に暴落に転じた。また先週ヨーロッパと歩調を合わせポールソン財務長官が25兆円の公的資金を主要9行に注入することを発表すると株価は高騰したが、またもや翌日から暴落に転じ、上げた分は取り消されるどころか、さらに下げが深まる結果となった。正に歴史的な上げ下げを繰り返したことになる。

「時事直言」でも述べたように、不況感が高まりつつあるアメリカ経済を救済するには金融機関を救済するだけでは事足りない。金融機関はあくまでも読んで字のごとく資金の融通機関、すなわち経済の補助機関であって決して経済主体ではない。アメリカ経済が不況から脱するためには経済の主体を再生しなければならないのである。

経済主体の成長の決め手は「消費」と「設備投資」である。消費と民間の設備投資が伸びなくては経済の再生は有り得ないのである。現在アメリカの消費も設備投資も連続減退、失業率がうなぎ上りだから、アメリカ経済は今正に不況に落ち込もうとしている。住宅バブル崩壊で不良債権が集中した投資銀行は経営難に落ち込み信用危機が進行している。

そこで米政府は前述の緊急対策を矢継ぎ早に行ったが株式市場の反応は否定的であった。それは、目先の金融機関救済に重点を置き過ぎ、肝心のアメリカ経済主体再生へ向けての政策をないがしろにしていると市場が見なしたからである。

もし今後公共投資、雇用増大策、低所得層向けの思い切った減税が行われなければ、アメリカの株価はどこまでも下がり続けるだろう。ブッシュ大統領は道路等インフラ向けの公共投資や雇用対策を口にするが、具体案を議会に提出しているわけでもなく、市場は単なるリップサービスと見なしている。今後どんな経済再建政策が提案されても、現在大統領選挙中でもあり、政府と議会が即応することは困難。どうしても次期大統領の下で来年のことになる。ところが現実は厳しく、住宅ローンの半分が不良債権化していて、住宅価格は下げ止らない。住宅価格が下げ続けると家計の含み資産が縮小し、信用枠が低下するので消費が減退する。消費が落ちれば企業は供給を落とすため設備投資を見合わせる。消費と設備投資が落ちればGDP(国内総生産)はマイナスに転じて不況に向かうことになる。

この経済主体が落込んでいる悪循環を断ち切らないとアメリカ経済再建など有りえないのである。ただでさえ財政難の時、金融機関という経済の補助機関の救済にばかり税金を使い、肝心の経済主体の再生策をおろそかにしているうちはアメリカの株価が上がる気配はまったく無い。やがてアメリカの株価と日本の株価の連動は終わりを告げ、日本株の独壇場になるものと信じて疑わないが、その時期はまだ先のようである。このままだとNYダウは6000ドルに向かい、ニッケイも7000円台に突入するかも知れない。ここのところは持株はそのままにし、有望株への切り替えもせず、余裕資金があればニッケイ平均7000円台でナンピン買いに入るしか選択はなさそうである。いくら先進国の中央銀行が資金供給を続けても、砂浜にコップの水を撒いているようなもの。民間需要を喚起しなくては、経済は後退するばかりである。先進国共同体勢の方向は完全に間違っている。

このままでは株価低迷は長引くばかりである。


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