第502(2008年12月17日号)

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21世紀、それは歴史が終わるとき

20世紀までの人類の歴史は正に「戦争の歴史」であった。国家には文化、伝統、宗教、思想、哲学等々のアイデンティティー(ID)があり、国民は国旗、国歌とともにそれを誇りにしてきた。戦争は国家の総合的覇権争いであり、それを主導したのは政治であった。政治の歴史もまた戦争の歴史であった。20世紀までは政治は国家を主導してきた。

政治は国家の安全、維持、発展と拡大のための主体的機動力であった。だから大統領や首相などの元首は国家のIDを代表し、国家を指導してきた。アメリカにおいても歴代の大統領は支配階級(エリート)から選ばれた者だけに限られていた。2008年11月オバマ次期大統領が選ばれた時、1776年以来のアメリカの歴史は終焉したのである。

オバマ大統領は何を象徴するか

オバマ次期大統領は「大衆」から選ばれた大統領である。大衆にIDが無いようにオバマ次期大統領にもIDは無い。オバマ次期大統領は支配階級(エリート)ではない。今までエリートに支配され、「与えられてきた」被支配階級の出である。一国の、しかもアメリカという世界に最も大きな影響力を持つ国の支配基盤が逆転することは「革命」である。

血も流さず、世界が動転することも無く、アメリカに静かな革命が起きたのである。何ゆえアメリカに革命の意識さえ無い中で静かな革命が起きたのだろうか。

国家から「インフラ」へ

政治をエリートが司る時、国家は主体であり、政治は目的と戦略のもとで能動的に行われる。政治が大衆の代表に委ねられると政治から主体性が消滅、従属的になる。主体性なき国家の政治はもはや覇権を追求することもなく、むしろ国際協調に向かう。主体性無き国家の経済は市場誘導から市場協調に変わる。政治・経済から牽引力が消滅し他国依存度が増強する。オバマ新大統領を待たず、もはやアメリカのFRBも財務省も「笛吹けど踊らず」となっている。アメリカのオバマ大統領の選択は、「アメリカが国家からインフラに変わる」革命が起きたことを象徴している。主体性無きインフラ国家とID無き大衆は革命に気付くこともなく、いつもと同じ生活を楽しんでいる。今やアメリカは世界の競技場であり、世界のバザール、つまり誰も気付かぬうちにインフラになってしまったのである。

ドルの終焉

20世紀のアメリカの政治覇権はドルに負うところが大きかった。最近までドルが国際基軸通貨であるため、アメリカは自国の負債を世界に負担さすことができた。つまり国際取引通貨がドルであるため、アメリカ以外の国際間での交易が増大すればするほどドルの需要が増すから、需要が増えた分だけドルを印刷して自国の負債を払うことができた。

ところが、こうしたドルの搾取を何時までも許すわけにはいかないと、1999年ヨーロッパ全域を包含する広域の共通通貨ユーロが誕生し、以来ユーロ圏は拡大を続けている。これでドルの覇権は一気に半減したのである。アメリカ経済が支配的であった戦後約25年間、世界はドルの恩恵を受けたが、1971年8月15日のドルと金との交換制の廃止とともにドル通貨採用の弊害が認識されるようになり、ドル離れが進行し続けた。アメリカは双子の赤字、三つ子の赤字国だから、潜在的経済破綻国家である。ドルの基軸通貨制がさらに減退すればアメリカ経済の破綻を防ぐ手立ては無くなる。最後のチャンスが常設オリンピック場としてのNY市場である。世界からNY市場なるインフラにどれだけ資金が集中するかにアメリカ経済の存否がかかっている。


「どうなる、2009年!? 不況続行か、回復か、売りか、買いか、!!??」の題で、来年をずばり直言しました。



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